熱を抱いていると往々にして音のある夢を見る。ばさばさとした忙しない音の響く夢だ。 それはたぶん熱に追い立てられた僕自身の鼓動の音なのだと思う。 ただそれに追われて、ひどく不快な夢を見るのはいただけない。
不快な夢から必死で目を覚ました後は、荒い呼吸で暗闇の中、空虚に目を開けている。 自分の中で、眠りに戻りたい疲労感と、あの夢には帰りたくない恐怖感が争っているのを感じる。
そんな時はあえて、ひとのことを考える。 今も会いたくてたまらぬひとのことを考える。 ただ苦しくて目を閉じずにはいられないように。 せめて夢の中で狂おしくあのひとを追うのなら許されるみたいに。
だから熱を帯びて眠りに就くのは嫌いだ。 ただそれはもう、絶望に近い。
その日はたぶん、いつもと変わらず普通の日の装いでやってくる。 僕は何の希望も抱かず、むしろ絶望に囚われてそこに立っている。
そこへ運命は、 何の前触れもなく訪れて僕を打ち壊し屈服させて走り去る。
その日を、その圧倒的な運命を、僕はただ待ちわびている。
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