たった一通のメールに指先が震え立っていられなくなる自分を何としよう
たとえばそこに、摘み取れない花があるとする。 手を伸ばすことさえ禁忌のような。
香りが届く。 色が映る。 風にしなう音が響く。
それでも固く自分に科した戒めがある。
葛藤は、息もできぬほど。 それを見せられるはずはなくとも。
きみのこえがききたいです
メールにすることすら、たぶん、してはいけない。 何度もクリアキーを押す指。 ためらって、ためらって、もう何を書いてさえ途切れてしまうだろうメールのやり取りに、本気で絶望しながら送信キーを押してしまう。 あいたい とも はなしたい とも送ることはできない。 携帯の画面に映る文字に唇を当てる、この胸の燠火が消えないのは何故だろうともう何度となく繰り返した問いを呟く。 あぁ、 あいたい、 ただあいたい、 声を聞くだけでもいい、 姿を見るだけでもいい、 ただそれをあのひとに伝えたい
送信キーを押してしまえば解き放たれた言葉の矢は羽を駆ってあのひとの小さな画面へ届くだろう、
ただそれが何のうるわしい結果も生まないのが口惜しい
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