あきれるほど遠くに
心なんか言葉にならなくていい。

2007年04月24日(火) こころの身代わりに




 あめが、



泣くことも忘れたさ。
そう思っていたけれど、どうやらもう死んでしまったひとのためなら泣けるらしい。
裏返せば、それ以外の何のためであっても泣いてはいけないような、微妙な制約。
浅い池の中に足首までを浸して立っているような感覚。
そこでは泳げもしないし、溺れられるはずもない。


だからぱらぱらと浅く降りだした雨の中を踊るように歩きながら、相変わらず泣けない胸の内は少しずつ、軽くなっていくようだと息をしている。
泣けもしないなら誰かが代わりに泣いてくれればいい。
濡れていく頬に救われている。
泣けないなら泣けないで、泣きたくないのならいいのに。
潔く。
救われた気持ちなんかしなければいいのに。




こころを、徐々に貶めていく。
この狂気のような執着はどうしたらいいのだろう。
濡れていくアスファルトと緑を増す樹々と、甘い香りの夜の空気。
過去は甦るはずもないのに、風景が情景をなぞれば感情だけが何度も自ら再生する。
過去の情景のまま。

ひとの名前は触れるだけで痛むのに、その名を脳裡に呼べば強く眩暈がする。
ひとを想う。
想えば感情がひきずられる。
こころが、貶めたはずのこころが息をしようと藻掻く。
息をしないでほしい。
そこにあると言わないでほしい。
こころを。
腐り崩れ落ちる前に凍り付かせる前に、もうそこにないものと信じようとしているのに。









↑雨よ、この身の上に

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周防 真 [MAIL] [HOMEPAGE]

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