あきれるほど遠くに
心なんか言葉にならなくていい。

2007年05月09日(水) 名も姿も無い鳥の





   会いたい、会いたいと啼く小鳥が居る





あのひとは微笑む努力をする。
或いは哀れみを込めて僕を見る。
或いは単に無表情に、僕の感情を探るように僕の眼の奥を見る。




時折我に返ったように此処に生きているのは何者かと思う。
外側から。己の指を握る。頬に触れる。
感触がひどく朧で、何だか悪寒に襲われる。
微笑むのは誰だ、と声がする。身の奥から。
声すらも自分の内側でない奥から聞こえるようで眩暈がする。
此処にいるのは誰か。
誰かと思っているのは誰か。
誰かと思っているのは誰かと思っているのは誰か。
求心力を失う精神。
或いは求心力を取り戻した精神。

正しく私は思う。
「そんなことは今考えるべきことではない」
明瞭な答えの無い問には休息と忘却を、もう真夜中は過ぎた。




  しかし此処に、会いたい、会いたいと啼く小鳥が居る




その感触は薄氷のように華奢だ。
それだけにその羽ばたきを捉えるために胸の奥に耳を、澄ましてみる。
囀りはひどく、瞭として冴え渡る。
心、がどこにあるのかも判らなくとも、胸の空虚な辺りから骨の裏側に共振するようにその啼き声は響く。
それは内側から響く、と僕は直感している。
自明の理のように。
心がそこに在るのだと僕は信じる。










↑姿も無い鳥が生きている

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a bird cries for you and the moon
―――――――会いたい、会いたいと啼く小鳥


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周防 真 [MAIL] [HOMEPAGE]

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