あきれるほど遠くに
心なんか言葉にならなくていい。

2007年06月08日(金) あなたの声さえ聞こえたら





午後から大阪に出る。
大阪はいつもぶんぶんと車が飛んでいて、排気ガスと煙草の匂いがする。
空は細切れにしか見えないし、どうせ見上げると白っぽく晴れも曇りもなくガスがかっている。
どうにも好きになれないのに気になる街。
わかっているあのひとがいるからだ。

用事は単調に終わり、ずいぶんとかけはなれた年齢の同席者たちを横目に京都方面へ戻る地下鉄へ降りて行く。
講師役だったセンセイを見かけるが、普通に面白みの無い内容だったので軽く無視。そういう部分でもやっぱり自分は人嫌いだと思う。
そして髭のあるオヤジは嫌いだ。なんとなく。


大阪からわざわざ職場近くまで帰る。
阪急電車の京都線、2ドアの特急車両は通勤帰りの乗客で程よく混んでいて、座席からは曇り空の下の都会から家並みまでが目を開けるごとに入れ替わる。
京都の街中に近付きながら、水田に不穏な黒さの空が映るのを見ていた。
風もひそやかなこの場所へ、嵐が迫り来るのを想像すればどこかわくわくして雨の匂いを想像してしまう。


失うものさえなければ6月は穏やかだ。
雨の音は優しく僕に響く。
目を閉じて、眠る前の一時を雨とともに過ごすと、顔の上に降りかかる温かな涙のようなしずくを思い出す。
ひとを思いがけず奪われたあの日から、もう3年が過ぎてしまった。



ひとの名を呼んでみよう、もうあなたの誕生日も忘れてしまったけど。
それはもう以前からあまり覚えてもいなかったから許してもらうとして。
泣きそうに眉根が歪むのは罪悪感からで、そしてそれと喉が詰まるのは恋しさからで。
まだこんなふうに厚顔無恥に言うことができるよ。

K、
今日はあなたのために香を焚くよ。


K、どこにいる?









↑生きていてもいないのも同じ

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あなたの声さえ聞こえたらどこへでも行けるような気がしていた

それはいつだったか書いた断片のコトバだ。
あの頃はまだ、
せめてどこかであのひとに生きていてほしいと思っていた




今は、


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周防 真 [MAIL] [HOMEPAGE]

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