雨の日の髪は濡れた柳の葉のようで好きだ、と言うと驚かれた。
どうやら女の子の髪は違うらしい。雨の日にはぶわーっと広がったりくしゃくしゃになったりするものらしい。 面白い。
雨の日の髪はどこかふっくらとしていて眠たげだ。 手を入れてかき回しながらぼんやりとする。
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何故か昨日から右手小指の爪が痛む。 僕の爪はあまり強くないので、どこかでぶつけたかも、と今日はテーピングしてみた。 微妙な痛みは治まらない。
もしかすると、と。 考えてみる。 あのひとが何か痛んでいるのかしら、と。
それは甘すぎる妄想だ。 ひとの痛みがここにあるなら、そう思うだけで何かがふっくりと満たされる。 小指の爪を噛みしめる。 痛みはその想念だけで甘く変わる。
もう僕は長い間、そんな痛みが欲しいと思っていた。
あたたかさや痛みや苦しみや希望や、微笑みのようなもの。 雨が大地に染み込むような想い。
そんなものがここにあればいいと思っていた
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雨は昼過ぎには上がった。 けぶる霧のような雨が僕は大層お気に召したというのに。
夜、目を閉じていると雨の音がさやさやと響く。 6月だというのに、夜はこんなにも明るくて星を思わせる。 夏がどこにあるのかすらわからなくて僕は途方に暮れる。
ひとをなくしてから、僕には季節すらあやふやだ。
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