絡めた指先が穏やかに人差し指の輪郭を何度も何度も撫でてくるのを
一皮剥けばふつふつと欲望が沸いて出るのを抑えられずにいるのに
懐かしさに匂う指先がおそらく無意識にだろう何度も何度も
もしかしたらこのまま別れてしまうのを惜しんでか何度も何度も
人差し指の爪のざらついた表面を絶え間なく撫でてゆくのを
隣に座る腹の出た因業親父が下卑た笑みで覗き込んでくるのを感じながらも
金縛りにあったように振りほどけないでいる
触れて、しまえば
離せなくなることを知っていて
あえて手に取らず口付けもしないのに
やがて待っていたかのように
陥落するこの業の深い指先が耐え切れずその指先を掬い取るのを
待っていたかのようにこの手を手放そうとしないので
その感触に戸惑いながら
目を閉じる その暗闇に何度も何度も
小さく稲妻が走るように穏やかな指先の往復が響く
君の、夢見るような遠い目の届く先
それをもう見たくはないと思っても
変わらずやわらかな美しい指先が何度も何度も
人差し指の上辺に触れている
|