あきれるほど遠くに
心なんか言葉にならなくていい。

2007年11月09日(金) 恋にことのは




だめだだめだ。
なんか、いなくなろうとしてた。無意識にだけど。
詩がアタマの中をぐるぐるする。
前と違うのは、たぶん、詩とあのひとが切り離されたということ。
たぶんまだ、一部分だけど。
少しだけ解放感。
そして絶望。


 **






時計台の文字盤の光が
ゆっくりと明るくなってゆくのを
隣で仰いでいた横顔が
帰らなきゃ、と言うので
私は素直に応え
送ってくれる腕を肘に絡めながら 雨の跡の残る階段を下りる
そらいろは藍
心もち離れた肩が
最後に笑みだけを置いてまた駅へ戻ってゆく
喉に血のにおいがする
のは
明け方まで啼いた鳥のせいだと
熱の残る額にまた
冷えた指先を
あててみる


鳥には鳥の理があり
縛られぬ魂があり
融通の利かぬこの身体以上に
巨きな羽と誘惑に弱い舌がある
渇く喉は水を頼み餌を啄ばみ
空を
求める声は明け方に高い


かえりみち
揺られてゆく車の中で
舌に残る苦い珈琲を飴玉で中和し
恵まれた蜜のざらりとした喉通りで
今日ついた嘘のひとつひとつを詫びてゆく
自分だけに都合の良い倫理などありえないことはわかっていても
崩れていく道徳と 閉じてゆく欲望の狭間で
それらはどこか惰性の匂いがする


日常に添える憂欝と色鮮やかな退屈の用意
喉の血の味は飴に融けても
詫びるだけの嘘は安らがない夜に忌々しい
足音もしない夜更け 遠く
鳥の啼く声が電気信号に混じる


鳥を飼うひとの穏やかな笑みに どこか透ける疑念の色
あなた ひとり 失えば
餌をなくし けれどまたどこかで水を飲む鳥を
このひとはまだ
籠に入れたいのだと
思う


心はそらを
翼もそらを
欲望だけが ここを 指し示し
鳥はまだ
明け方に高く 声を絞る
いつか
あのひとに縊られる
いつかの日を思うたび
空は昼も夜も美しく私を誘う




 **







↑いつかどこかへ、逃げてゆけたら。

My追加





恋にこころ、想いにことば、願いに望みのないはずはなくても。


 < 過去  INDEX  未来 >


周防 真 [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加