ひとに他人が近付くのを見ながらひどく不機嫌になっている、これではまるで 何かをひがんでいるようだと思いながら何故こんなにも不機嫌になるのかを考えてみる 考えればひとの姿はどこか未練が匂って もうとうに忘れたはずだと思いながら好きだと言えなかったころの心持ちを浅く掘り返してみる、 それは 先程のひがみや妬みといった理由付けよりは程遠く妙にしっくりと馴染むので あぁ、 と納得しかけている
けれどそれは たぶん執着や僻みや妬みといったものの寄せ集めだと言うほうが はるかに真実に近くて 心をこねて色めいたものを探したいあがきのような あきらめの悪さがさせるのだろうと 冷えたオリオンを見上げてみる
好きだ好きだと言葉に換え声に出せば心はことばに縛られる その 容の定まらぬ心のしずくを どの言葉の型へそそごうかいつも決めかねる そそいだからといってすぐに流れ出る心が干上がっても やはり自由になる心などここにはないのだ
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