へらへらと、無防備な表情を見せてしまっているという自覚はあった。
そばにいるだけでどうしようもなく警戒心が溶けてしまうひとというのがいる、 それはたぶん僕は頭の中でひどく計算をしていて、 このひとならたぶん、 だいじょうぶだ、 という 直感に近い演算結果にもとづいて心がやわらかく骨抜きになるのだろうと思う、 ただ時々、 少しずつ このひとではないという憎しみのにおいに似たものが 僕の中身を強張らせるので まだ僕から ひとのためにかけた呪いが解けていないのを思う
ヒトが好きだ、と思えば世界は明るい。 ここに何の理由もなく自分が立っているのだということも。 けれどあのひとのことだけは、考えれば自分が脆く壊れるように思う。 イヤなことは1日あれば忘れられる人間になれた。 なのにあのひとだけはまだ僕を刻んでいく。
心は心、思いは思い、切なさだけでヒトが生きていけるはずもない。 それでも こんな風に笑うはずではないという 何か妄信にも似たものが 憂鬱な夕方にふと甦る。 どこかへ、帰って行けはしなくても 心はただ絶望的に危うい
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