【6】毬ちゃん

 その子はおでこの下からクリクリとした目で覗き込み、ぶっきらぼうに言いました。
「権利なんていらないもん。責任が付いてくるから」
「難しいことを言うね」と返したら、鼻を鳴らすような仕草と沈黙、厳しい視線が返ってきました。

 確かに時には「責任が付いてくる権利なんていらない」と思っているかもしれません。

「時には?」

 いつもかもしれないけれど、そうじゃないと思う時も…。
 違う違う、基本的にはそうなんです。

 私は責任をぬって生きているのかな?

「責任を先に持ってこられると、なんか損した気持ちになるの」
「欲が満たせるならいいんだけどさ」

 彼女は呆然としている私を見て、さも面白そうに笑いました。
2005年04月02日(土)

寝言日記 / 杏