2003年02月22日(土) |
松岡圭佑『煙』★★★★☆ |
 『煙』 松岡 圭祐 徳間書店 (2000/03)
ふぅぅぅぅ。 読んだて。 ★は、よっつ。 面白かったというか、ずっしりと重かった。いや、じわじわと、面白かった。
半ば過ぎても面白いと思えんもんだから、読むのやめようかとすら思ったんやて。 本当にこれが『千里眼』の著者の作品?て。 たまにははずれもあるんかしら、て。 しょぼくれた厭世的なおやじの語りが続くのがつらかったってー。 それも延々とだにぃ。
それが、ぜーんぶラストのために必要不可欠で、計算やったんやって、今は思う。
主人公は、タバコ屋のおやじ榎木。
なんていうか直視するのがつらいっていうかダルい、好感持てんのやって。 すごくヤニくさいなんて、タバコ嫌いの私はそれだけでもひいてまうんやけど、ストーリー全体に煙がかかってる、ような感覚があってさ。 話の展開も見えにくくて、よくわからんしさ。途中までは、ほんとつらい。
でも。ほいでも、だんだん榎木がかっこよく見えてくるんだて。 違うか。 自分の中で認めざるを得なくなってくる。気になるひと、になる。 そして彼は裸祭り、ちがうか、諸肌祭で裸男の群衆に突っ込む。
そして衝撃の真実。ラスト。
がーーーーーーーーーーーーーーーん。
うそだって。いかんて。そんなのいかんて。切なすぎるって。許せんて奴ら。 そんなんあり?だったら、もっと早ぅきづかんと、榎木! ネタバレになってはいかんもんで、こんな書き方になってまうけど、許してちょーね。
なんで今回は名古屋弁なのか(しかも怪しく遠州なまりと関西なまりもあるようだ)というと、この小説の舞台が愛知県稲沢市(生稲市となっとるけど)で、登場人物も(って榎木だけか)名古屋弁をばりばりに使っとるから。 故郷を舞台にしとるのが懐かしいもんだで久々に私も使ってみよーと思ったんだて。 読みにきぃーてかん?わぁーりぃねぇ。 直接聞いてみてゃーて?えーよ連絡ちょーでぁー。 あーよぉやく調子でてきたがね。
フィクションだて著者もあとがきで書いてらっせるけど、稲沢周辺に住んどる人なら思わずノンフィクションだったら、と下世話な楽しみ方もできる一冊。 北宮市(一宮市)、布施宮神社の諸肌祭(国府宮神社の裸祭)、地元の大きなスーパータガノヤ(ヨシヅヤ)、操車場、警察署。 あのへんかな、このへんかな、て想像しながら読むのも楽しいて。
松岡さんは稲沢の出身とのこと。しかも年齢も二つ違いなので、すごーい生活圏がだぶってた。うれしー。あらじん(亜ら時…どんな当て字やったっけ)で珈琲飲んだりしてたかもー。 もしかして「ちゃんラーメン」も好きだったかもー。
というわけで、松岡圭祐さんにより親近感を持つことになった一冊でした。
『煙』
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