2003年03月07日(金) |
赤川次郎『素直な狂気』角川書店★★☆☆☆ |
『素直な狂気』 赤川 次郎 角川書店 (1994/02)
ミステリー6編。 子どもに中断させられても「んもーっ!」とならないくらいの、面白さ。 でも、なにかが心に残った。
一番面白かったのは、『皆勤賞の朝』。 厳しい校長のいる名門小学校。 そこでただ一人、皆勤をとおした主人公。 熱があっても、注射で下げ、天候不順も用意周到にすることで乗り越え、いざ表彰される卒業式に向かう朝。 主人公は間に合うのか。
前日に、通学途中に邪魔をする犬を弓で射ぬく。 それも平然と。 何かがおかしいのだけれど、母親の異常さが一番恐い。 「何がおかしいの。うちの子が皆勤をとおすのに邪魔なんだから、殺されたってあたりまえでしょう」といわんばかり。
そして、せつなく、かなしい、ラスト。 母親はまだ食い下がる。気付かない。気付けない。大切なことに。 皆勤よりも、表彰よりも、プライドよりも大切なことに。 その天然さが、痛すぎる。
アガサ・クリスティの『春にして君を離れ』と同じ痛さだ。 でもこの母親は気付かないままかもしれない。
気付いたつもりの、自分も、やっぱり変わっていない。 だめだなぁ。
『素直な狂気』
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