2003年03月10日(月) |
東野圭吾『同級生』祥伝社★★★☆☆ |
 『同級生』 東野 圭吾 講談社 (1996/08)
女生徒の交通事故死。 彼女は妊娠していた。 彼女を追いつめた教師の死。 そしてさらに事件は起きる。 女生徒の「恋人」だった主人公の所属する野球部は大会に出場できるのか。 妹春美の病いの理由は。 真相は、一体どこにあるのか。
てな感じですすむお話。 東野さんは他の小説でも書いてらしたけど、「教師」というものに嫌悪感を 感じてらっしゃる。それがストレートに伝わってくる。 そう、大学出てからずーっと閉鎖された学校社会にいて、「社会というのは そんなにあまくないんだぞ」としたり顔で言われてもねーっての、わかる。 自分も教育実習やら家庭教師やら塾講師で「せんせい」扱いされて、困った。 もちろんやるからには「らしく」ふるまいたいと思ったけれど、「せんせい」に内包される「尊敬されてあたりまえー」という空気に違和感を覚えたのだろう。
「せんせい」が尊敬されるのではなく、尊敬できる「せんせい」が尊敬できるだけなのだ。
推理小説でもあるけれど、これは青春小説といった方がしっくりくるような気がする。 主人公の大人びた点(頭のよさ)と、稚拙な部分が交錯しているところがいかにも高校生で、甘酸っぱい印象。 読みながら、林真理子さんの『葡萄が目にしみる』だっけ、を思い出した。
私にも、こういう時期があったなあって。 せつなくて、バカで、恥ずかしくて、楽しかった、そんな時期が。
たまにはこんな風に自分の過去に触れてみるのも、いいのかもしれない。
『同級生』
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