2003年03月27日(木) |
東野圭吾『天空の蜂』講談社★★★☆☆ |
 『天空の蜂』 東野 圭吾 講談社 (1998/11)
奪取された大型ヘリコプター。 誤って乗ってしまった少年が一人。 ヘリは稼働中の原発の上でホバリング。 そして政府に対して、犯人からの要求が。
すべての原発を停止せよ。さもなくば、ヘリを原発に落とす、と。
政府の決断は。 少年は救えるのか。 ヘリは原発の上に落とされるのか。 犯人の意図は。 犯行の方法は。
文庫で、616ページ。 これを一気に読ませる力量は、やっぱり、さすが東野さん。 といいつつ、半ばで断念し、二日かかって読みました。
救出劇は映画『クリフハンガー』や『マトリックス』をちらっと思い出させる臨場感に溢れた描写でどきどきした。 刑事が聞き込みをすすめつつ、犯人へと近付いて行く行程も緊迫感があった。 息子の死、防衛庁内のクーデターシミュレーションの処分。 犯行の動機にかかわるこれらのエピソードがちら、ちらと垣間見えて先が気になってたまらない。 原発の危険と恩恵を無理解な大衆は知るべきだ、というメッセージも重かった。 そう、一度は蜂にさされてみるのも必要なことかもしれない。
必要とされているのに、存在が疎まれる。 それは、つらい。動機となった彼等のつらさは本当に痛ましい。 あえて、そこの原発を選んだ犯人の意図を考えると、切ない。
面白く、かつ重い本。 おすすめです。
『天空の蜂』
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