| 2003年04月05日(土) |
梶尾真治『黄泉がえり』★★★☆☆ |
 『黄泉がえり』 梶尾 真治 新潮社 (2002/11)
背表紙より。 「あの人にも黄泉がえってほしいーー。 熊本で起きた不思議な現象。老いも若きも、子供も大人も、死んだ当時そのままの姿で生き返る。間違いなく本人なのだが、しかしどこか微妙に違和感が。喜びながらも戸惑う家族、友人。混乱する行政。そして”黄泉がえった”当の本人もまた新たな悩みをかかえ…。彼らに安息の地はあるのか、迫るカウントダウン。「泣けるリアルホラー」、一大巨編。
いつもながら、こういう文章を考える人というのはうまいなあ、と思う。 ここで「うっ読んでみたい」とつかんだ本を持ってレジに向かわせなくちゃいけないわけだから書く方は、真剣勝負。 それでお金をもらうプロでもあるわけで、読み手としてはその本の面白さをさらっと教えてもらえると助かる。たまに「誇大広告だ!」とクレームをつけたくなるケースもあるのが困るけど。 この本はそこそこ適切に解説されていると思います。
ホラーはほとんど読んだことがないジャンルなのだが、これは面白かった。 黄泉がえる人たちがゾンビみたいではなく(全部では…ごにょごにょ)、黄泉がえりの条件が愛されていた、もう一度会いたいと思われていたということがミソなんでしょう。
行政の困惑した対応ぶりもありそうで面白かった。 黄泉がえりの希望をもって転居してくる人たち、病苦で苦しむよりはいったん死んで健康な姿で黄泉がえる方がいい、と自殺する人たち。ありそう。
現実に起きたら、どうだろう。 自分の周りで起きたらどうだろう。 母方のおばあちゃんは黄泉がえるだろうなぁ。私含め、本当に大好きだったもの。 犯罪で亡くなった人も遺族の念によって黄泉がえるだろうけど、犯人はこのひとでした、ってなったら警察も大忙しだ。これについてはあえて書かなかったのかな。違う話になっちゃうものね。
私自身はどうだろうなぁ。 黄泉がえらせてもらえるかしら。そこんところを考えるのが一番の「ホラー」だったりして。恐い恐い。そうでありたい。努力もしなくちゃ。
ところで、クライマックス。地震のエネルギーを吸収した「彼」がごにょごにょした後で、「彼」だけごにょごにょだったのはなぜでしょう??? 誰か教えてください、わかりたい、わからない。
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