| 2003年04月14日(月) |
東野圭吾『手紙』★★★★★ |
 『手紙』 東野 圭吾 毎日新聞社 (2003/03)
星は4.5ってとこなんだけど、5に近いので、星いつつ。
読み終えて、うわぁぁぁーーっとうなってしまいました。 痛い、痛すぎる。 泣いちゃうと後が大変なのでぐっとこらえる。 かなしくて、さびしくて、やりきれなくて、わかるような気がして、せつない。
貧しいけれど、仲のよい兄弟がいた。 兄は弟の進学費用をどうしても用意したくて、こそ泥を思い付く。 お金をポケットに入れて逃げようとしたところ、家人に見つかり、通報しようとした彼女を殺してしまう。
すぐに逃げればよかったのに。 そうしなかった理由にも、いきなり泣かされそうになる。バカ!バカバカ!
で、お話は服役中の兄を持った弟の人生の紆余曲折と、苦悩、選択へと続いて行く。 住まい、就職、結婚、夢、「殺人を犯した兄を持ったこと」で弟がしょわされた重荷、苦労、被差別。 差別を肯定し、ヒントをくれる人との出会い。 そして彼の選択は。
この作品がイタイのは、フィクションでありながら、ノンフィクションだということ。 殺人も毎日のように起きている。交通事故も起きている。 加害者被害者がいて、その家族がいる。 関わったすべての人が、傷ついている。苦しんでいる。
フィクションとして距離をおいて読める、今の自分はなんて幸せなんだろうと思う。 ノンフィクションどころか、そのままの人生を送っている「弟 直貴」の立場の人、彼の妻の立場の人、彼の子どもの立場の人、被害者の人、遺族の人、被害者家族の人、そういったすべての人が心やすらかでいられるように。 なにができるだろう。 自分の周囲がやすらかで平和でいられるようにすることだよね、まずは。
最後の兄からの手紙が、もぅ、くぅう、と思わされます。 最後から読んじゃ、絶対ダメ! 松岡圭佑さんの『煙』もそうだけど、最後のどーん!を楽しみに、じりじりと読んでくださいね。
|