| 2003年04月21日(月) |
赤川次郎『ひとり暮し』★☆☆☆☆ |
 『ひとり暮し』 赤川 次郎 幻冬舎 (2002/10)
こんなに読むのがつらい赤川次郎は初めてだった。
どうつらいかというと、「もうやめたい」という衝動と戦うこと。 これくらいの量なら1時間もあれば読み終えてしまえると思うとやめるのもシャクだし、『歴代の途中でやめた一冊』に入れるのもいや、記憶にとどめとく価値を感じないのでさくっと読んで、「あんまりおもしろくなかったな」ですませたい。 ということで、やっとこ読んだ。
なんだか笑いのポイントが違うんだよなぁー笑えなくてつらいんですけど、と人間関係で感じることってある。 かつてしたことのあるお見合いでもそういう人がいて、逆にその重要性に気づかせてもらえてありがたかったという経験をした。
それに似た感覚。
新女子大生の依子が初めてする一人暮らし。 アパートの住人は複雑な事情を抱えた人ばかりで、いきなり部屋に他人の荷物はおかれてるわ自殺未遂はあるわ、トラブルに巻き込まれつつ、けなげに、明るく、前向きに、解決していく主人公。
えっ。 背表紙より。 『頼りなかった少女が様々な事件や恋を通して成長する姿を描いたライト・コメディ。』 うそ。ライトなのは苦痛を感じるくらいよくわかったけれど、コメディだったのこれ。いったいどこで笑えと…。
この作品は『家の光』に連載されていたものだそうだ。 だからかなーと思う。 学生は勉強が本分だし、痴漢には毅然と立ち向かうべきだし、誰かを傷つけてまで自分の恋を優先させられない。正論すぎて、つらい。 それができない人間の性といったものに直面するのが楽しみで読書をすることが多い身としては。 修身の教科書としてはよくできてるのか、な。
赤川次郎さんもつらかったのではなかろうか。 こんな道徳の教科書みたいなお話を書くのは。 大金持ち、リゾートホテル、芸能界ときらびやかな道具を使ってみたところで、白々しさ倍増という気もするのだけど。
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