| 2003年04月29日(火) |
浦賀和宏『彼女は存在しない』★★★☆☆ |
 『彼女は存在しない』 浦賀 和宏 幻冬舎 (2003/10)
ミステリーって、要は『どんでんがえし』を楽しむものなのかな?
そんなことを痛烈に感じた一冊。 ネタバレになるので詳しく書けないけれど、だーいどんでーんがえーし!が好きな人にはおすすめ。 ちょっとだるいような気がしながら読み進めていったのだけど、実ははりめぐらされた伏線ゆえだったのかも。 最後にいたるまでのすべてが伏線みたいなものだもんね。
先に読み終わった相方に途中の推理を述べてみたりして、「まぁ、読めってことだ」とにやにやされつつ言われた。 ちなみに推理は大はずれ。やっぱりか…。
多重人格が引き起こす悲劇の殺人事件。犯人は一体誰か。 帯より。 『浦賀和宏の世界は確かに浦賀の内にある。 その世界を覗き見る者は、いつも最後に背筋が寒くなる。 精微な悪寒に襲われる。 本作は浦賀の最高傑作である』
うーん、言い過ぎ。 これが最高傑作なら、他読んでみよーとは積極的には思えない。 …偉っそうだなー…でも実感。 ただこの作品は面白かった。読み終えて「もう一度最初から読み直さなきゃ!」と思った。2度3度と味わえるよさのある本。
相方いわく、「自分は恐いと思わなかった『黒い家』をめちゃめちゃ恐いと言っていたから、『彼女は存在しない』も恐いと思うんちゃう」。 で、読んでみて、恐くなかった。 殺し方とか普通だし、腑に落ちない不自然さを感じる点もあるし。 新井素子さんの本で、愛して愛して愛し過ぎて、あなたを殺して食べちゃうの、しあわせ♡って話があったけど、私はこういうのが恐い。 狂気が恐い。
最後に読者を混乱させて、びっくりさせられて、納得させられる、『彼女は存在しない』の『彼女』の『不在』のための、原稿用紙738枚分。 読む価値はあると思います。
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