母のタイムスリップ日記
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帰りたいなあ の母のつぶやきに、問うて見た。 何処に? 家に。あんたも帰るのでしょ。私も一緒に行きたいな。 私の家? うん。 私の家は、この近くで、お父さんと娘がいるのだけどそこ。? ん?違う。ああ、私一人ででも帰らなければならないかな。 処で、私の名前なんて言うのかな? 喉まで出てるのだけど、......。 そして、いとこの名前で私を呼んだ。 今日の母は、娘の家で過ごした日々などすっかり忘れていた。 施設入居して間もない頃は、あんたの家に行きたいな。と言っていたのに。 どうして帰りたいの? つまらない。 怒られた?誰かと喧嘩した? そんなことはない。つまらないの。 ..。 私の我侭だね。我慢しなくてはね。あなたは、早く家にかえりなさい。 そう言って、私を玄関まで送りに来て、さよなら。ありがと。と手を振った。 母に涙は無かった。
在宅の時、時々母に向けて楽しい?と尋ねていた。うん、楽しい。幸せ。 その時だって、私はいとこだった。 帰りたいの訴えもあった。何か嫌なことあった?と聞くと家が恋しい。といった。
今日の私は湿っぽい。 在宅の日々が、淡々と過ぎた訳ではない。苛々もしたし、怒った日々もあった。 訳の判らぬことことを言って、お互い口も聞かず、だんまりとしてしまうことも あった。我慢はその時だって在ったのだ。 施設の我慢と在宅の我慢。 我慢の質が違うと思うのは、私の傲慢かな。
母は、落ち着いていたのだ。そして、私を、初めて見送ってくれたのだ。 冷静に考えれば、これは、喜ぶべき状況なのだ。
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