短いのはお好き? 
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2002年04月28日(日) プロローグ

  
 お元気ですか?

 私はいま、ヨーロッパ最北の町、ノルウェーのホニングスボーグに来ています。

 いまこの地では、長く厳しい冬のフィナーレを飾るように毎夜オーロラが音もなく舞っています。

 北風に煽られ優雅にたなびく雄大なカーテン、オーロラ。その気高く厳しい美しさを目の当たりにして、やはり私は旅に出てよかったと思うのです。

 何の目的のないまま、ただすべてのしがらみから、そして自分自身からをも逃れたいと思い立ち、旅立つ決心のつかぬまま半ばふらふらと東京を後にしてしまいましたが、くる日もくる日もこの荘厳なまでに気高いオーロラの光を眺めながら、私は意外なことに気付いたのでした。

 それは、自分自身がいやでいやでたまらずに過去から、自分から、逃げ出してきたというのに故郷を遠く離れれば離れるほどに私は逆に故郷に近づいてゆくのではないのかということなのです。

 気高いあのオーロラの向こうに、私はほかでもない故郷を見ていたのです。東京に残してきた私の家族。父、母、君そして娘。私は私の家族を自分ではそうと気付かぬまま、オーロラを透かして見つめつづけていたのでした。

 人生は旅です。そして、その長い旅路の果てに人がたどり着くのはどこなのかが、東京を遠く離れたこの見知らぬ土地にきてはじめてわかりかけてきたように思うのです。

 私のこれまでの人生は、すべてを否定することの連続でした。そして自分の存在さえも否定し去ろうとしていた私ですが、それは誤りでした。

 私の旅の目的地は故郷、ほかでもない故郷だったのです。私は、自分を求めて、家族を求めて、そして故郷を求めて旅していたのでした。

                    北緯71度 ホニングスボーグにて




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