短いのはお好き? 
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2002年04月30日(火) 真希

 
 ぼくと真希は、今はもう移転してしまったけれども、反町駅近くのモスで一緒にアルバイトをしていたことがあった。
 その頃のぼくは、ストイックなまでに音楽にのめり込んでいて……といえば、聞こえはいいけれど、実のところうまくいかない人生に半ば絶望していて、真希と楽しく会話するほどの心の余裕すらなかった。
 ただ真希は育ちの良さを窺わせる、ほんとうに気立てのよい娘で、その後、引っ越すということでアルバイトを辞めてしまったけれども、ぼくの心には真希のそよ風のように清々しく優しい印象が、いつまでも消えずに残っていた。

 それから1年ほど経った頃、渋谷のタワーレコードでたまたま真希と再会した。真希はバンドのメンバーと一緒で、そのときはケータイの番号を交換しただけで別れたけれど、それからすぐぼくから連絡をとった。
 ぼくはその電話で、ただ逢おうというのも気がひけて、一緒にスタジオに入って音を出そうという口実を設けたのだった。

 中目黒の駅から祐天寺駅へと線路沿いに走る道を、真希とぼくはのんびり歩いていった。
 途中で飲み物を何か買おうといってコンビニに入り、スナック菓子とオレンジ・ジュースを買ったけれども、ふたりでこうやって買い物をしていると、何か恋人同士のような気がして、もしほんとうの恋人同士であるのならば、こんな些細なことこそが幸せというものなのかな、なんて思った。

 真希の住んでいる部屋は、コンビニを出てすぐの脇道を入り、だらだら坂を上っていたところにあった。
 そこは二階建ての一軒家で、一階は大家である中年の女性がひとりで暮らしていて、二階だけを貸しているのだけれど、男性は住まわせないのだと、真希は言った。

 道路から直接二階へとつづく階段を上がって玄関に入ると、短い廊下がありその廊下の片側の棚には、プランターに整然と植えられた可憐な花々のように、様々な色合いの下着の入ったボックスが、無造作に置かれてあった。
 それらを見るともなしに見てしまったぼくを振り返り、真希はばつが悪そうにちょっぴり笑った。
 リビングはやけに広くって、狭い部屋に住んでいるぼくには落ち着かないほどに思えたけれど、更にその奥に妹の恵子ちゃんの部屋がつづき、真希の部屋はさきほど通った廊下の壁を隔てた6畳くらいの洋間だった。

 スナック菓子の封を切り、オレンジ・ジュースを飲みながら、ぼくらはとりとめのない話をした。
 一緒に働いていたときのこと。
 真希がキーボードをやっているバンドのこと。
 音楽のこと。




















 真希なんで死んだんだ?


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