短いのはお好き? 
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2002年12月25日(水)  イ ヴ #1




粉雪の舞う中、フェリスはおじさんに連れられて見知らぬ街を歩いていた。


行き交う人々はもう既になく、街灯だけが寂しげに灯りを通りに投げかけていた。


ぽつりぽつりと夜のしじまに浮かび上がるその街灯のあかりは、降り注ぐ粉雪に滲んで見えたけれど、フェリスにはやけに冷たく、そしてよそよそしく感じられるのだった。


これからやらねばならぬことを思うと、フェリスの足取りは更に重くなり、おじさんになかば引きずられるようにしながら歩いていた。


街灯の下を通りすぎる時、フェリスは降り積もる粉雪で既に消えかかっている足跡を見つけては、寂しさを、底知れぬ寂しさを味わうのだった。


あ、この大きな足跡はきっとパパの足跡だ。その横に並んでいる小さな足跡は女の子かな、男の子かな? その子は大きくて暖かなパパの手にしっかりつかまってどんなお喋りをしていたんだろう。


ぼくにはわかるような気がする。いや、絶対そうだ。


明日の朝、起きたときベッドの支柱に掛けておいた靴下に、サンタさんが願いどおりのクリスマス・プレゼントを入れてくれるかどうっかってことに違いない。


それに比べて、いまのぼくはどうだろう。パパでもなくママでもないこのおじさんの手は、ごわごわとして冷たく、ただぼくが逃げ出さないようにつかまえているだけだ。


それに…それにぼくのとこにはサンタさんは来てくれないに決まってる。だって、サンタさんは良い子だけにプレゼントをくれるのだから…。


でも、ぼくはおじさんに恩返しをしなくっちゃいけないんだ。おじさんはいつもそういっている。


 ―――なあ、フェリス。おまえを育ててやったおじさんの苦労を考えてみろ。それに比べりゃ、こんなこと屁でもないさ。な、おじさんの恩を忘れちゃいけないぜ、恩をな。


遠くでくぐもった犬の鳴き声がした。


大分街外れまできたようだ。


おじさんは何も喋らず、ただフェリスの左手をきつく握って歩いてゆく。


街路樹の梢から雪の塊が落ちてきた。


フェリスは、おじさんの言葉を再び思い出していた。


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