短いのはお好き? 
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2002年12月26日(木)  イ ヴ #2






 ……いいか、世の中にはな、お金を腐るほど持っている人がいるんだ。そういう人はな、おじさんたち貧乏人なんかより恵まれているんだから、善い行いをする義務があるんだ。


 つまりな、お金持ち人は貧しい人に施しをするっていう、善い行いが出来るチャンスがいっぱいあるわけだ。な、そうだろ? そこでおじさんの登場だ。おじさんはその手助けをしてやるんだ。だからこれは立派な人助けさ。


 それにな。陰徳っていってな、世の中の人に知られずに善い行いをするってことは、誰かに知られながらやるよりもずっとずっと徳を積むってことになるのさ。


 だからな、おじさんはこっそり忍び込んでたんまり恵んでいただくってわけよ。


 フェリスは毎日毎日こんなことを聞かされていたが、今でも納得がいかなかった。でもおじさんがフェリスを育ててくれたのは本当なのだから、その恩には報いなければならないとも考えていた。


 しかし、いざ、おじさんのいう人助けをする時になると、いつも後ろめたい気分になってしまうのだった。おじさんのいうように善いことをしたような晴れやかな気持ちには、ちっともなれなかった。


 それどころか、お勤めを果たした後のフェリスは、二、三日ずっと暗い嫌な気分を味わった。


 おじさんはというと、お勤めの後だけは、妙にフェリスに優しくなり、眼をぎらぎらさせてお金を数えながら、『フェリス、おまえはきっと立派な人間になるぞ』と、うれしそうに言うのだった。


 

 おじさんの足がとまった。


 どうやら今夜の目的地に着いたようだ。


 フェリスは俄かにそわそわし始める。


 いつもこうだ。


 その家は夜目にもわかる白塗りの大きな家だった。おじさんが身をかがめ、フェリスの耳元に囁いた。


 「いいか、いつもどおりにやるんだぞ」









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