短いのはお好き? DiaryINDEX|past|will
ヘレン・メリル、ソニー・ロリンズ、フレッド・フリス…。 ぼくは呪文を唱えるように好きなミュージシャンの名をあげてゆく。 ラジオからはレオン・ラッセルだろうか、だみ声が聞こえてくる。 こんなアンニュイな午後はきみのことを想い出してしかたない。 ふりはらってもふりはらっても、どこまでもきみはぼくを離さない。 きみの息遣いさえ聞こえてくるようだ。 すぐ後ろにいるんだろ? なにをいったいそんなに考えこんでるの? むずかしい顔してさ。 むかしみたいに笑ってほしいよ。 あんなに前はよく笑ってたのに。 てか、きみって笑い上戸だったよね。 エクボはでなかったけどさ。 そんな顔しないでよ。 どこか痛いの? 苦しいの? やがて きみの面影はいつものようにすーっと消えてゆく。 ぼくはキッチンにいって水道の蛇口をひねる。 ほとばしる飛沫。 あの時、きみはなんていったんだっけ? 全然思い出せない。 ほら、『恋におちて』を観た後でさ プランタンの一階の喫茶店にはいって そこでなにかいったじゃん 花も 風も 海も 空も みんなみんな ぼくらを祝福してくれたのに いまはなにもない なにもみえない ねぇ 聞かせてくれないかな あの時 きみはなんていったの?
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