短いのはお好き? DiaryINDEX|past|will
桜木町で東横を下りた。 前をゆく女性の背が気になったのは、背中がすべて露わになっているからだけではない。 そこには天使の翼の「tattoo」が入っていた。 と、その女性が小さな白い翼を広げてホームから不意に飛び立った。 ぼくは、あっ、と声を上げていた。 彼女だけではなかった。 人々はつぎつぎにホームから飛び立ってゆく。 前を行くカップルの男が彼女に説明している。 「ワールド・ポーターズの屋上めざして飛んでゆくんだけれど、あれの殆どは撃ち落されてしまうんだ」 「撃ち落されるって!?」 「射撃の標的にされるんだ。クレー射撃のクレーだな、いってみれば。でも、仕方ないんだよ。罪は償わなければならない」 「いったい、なんの罪?」 「それは、彼ら自身でなければわからない」 「でも、この世に罪のない人なんているの?」 「そう、そのとおり。だから、ほら…きみも飛び立つときがきたようだよ」 そういって彼は先に飛び立っていった。 いったい、どうなってんだろう。 ぼくは、狙撃されて海に落下してゆく、文字通りの堕天使たちを想像した。 頭がくらくらした。 ゆっくりと階段を下りて行く。 不意に身体が軽くなったような感じがし、背後で羽ばたく音が聞こえた…。
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