短いのはお好き?
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2003年12月18日(木) |
読書ニッキ ☆こよなく愛した 小島信夫 |
群像や文学界に載ったものをまとめた短編集。
企画の段階では、本書のラストを飾る『養老』という表題で編もうとしたらしいのだけれど、小島先生ご本人が、編集者の企画に『こよなく愛した』という一本を加え、更にそれを表題としたということでこの『こよなく愛した』をこよなく愛していらっしゃるようですね。
ていうか、こよなく愛してらっしゃったのは、『こよなくなく愛した』に出ていらっしゃる女性なのでしょうか。
なんとも味わいのある摩訶不思議な文章に一気に惹きこまれてしまうのですが、まったく仕掛けとか、言語実験とか、構造とかをいじりまわすことなく、これだけ異形な世界を構築・展開できる本物の才能というものを目の当たりにして、自分はまだまだ青臭くてだめだなぁと思うことしきりです。
巻頭は、告白調で綴られてゆく隣家の未亡人に宛てた手紙の形をとった作品なのですが、短篇集だということを忘れていて、一冊丸ごとこよなく愛してやまない女性への手紙を切々と書き綴ってあるのだと思い、「好き」とか「愛してる」という直接的な表現がないぶん、圧倒的な迫力で切ない気持ちがこちらに伝わってくるので胸が詰まる思いでした。
自分としては、この巻頭の『日光』がストレートでしかも、なんとも言われない味わいがあって好きです。
手紙は結局出されず、というか、はなから出すことのない手紙を書いていたわけなのですが、好きで好きで堪らないけれども告白することは絶対にないことを知っている少女の片思いのように儚い恋が美しいのでした。
ただしかし、これは自分に都合のいい「誤読のきわみ」かもしれません…。
上記textは、某サイトにUp済みです。
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