恋文
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もう いらない わたし なくなってしまおう こわす
わたしは きっと あるよね
まだ いるよ まだ いきてるから
また きっと あるはず この さきに
でも いちど こわす
もう いっかい もう いっかい
もっと もっと
わたし わかんないから 壊してみよう
雨にくすんだ夕暮れ 置き去りにされたような時間 どこかに わたしも取り残されてしまう
あなたと こんなにも細くても 繋がっていられるなら 今も 生きていられる
過去の どの時間を 共にしたのか 思い出すだけでも それは 繋がりなんだ
だけど この瞬間に どこかしら繋がっている と 感じること そうでないと
生きているように あなたの幻を見てしまう
そこには 忽然と現れた テントの群れや 遊園地の遊具
収穫を祝う お祭りの灯りが 薄暗がりの空の下に瞬く
わたしは ただ 静かに通り過ぎる
向こうに見える丘は まだ白く雪に蔽われていた
わたしの足元にも まだ、氷になった雪が残っている
風が頬に痛い すれ違う人たちと コートに身を縮めながらも 挨拶をかわすと 互いに微笑みあう
ここにある わたしの日々
凍ってしまって まだ 緑のままの葉も すっかり落ちてしまった
ただただ 空は 青かった
ただ この瞬間に わたしはいなくなってしまうんだ 簡単なこと
なんだ そうだったら 消えたいなんて 考えることないじゃない
いつでも わたしなんて消えてしまえるよ
いつしか雨は雪にかわっていた この街ではじめての 冬を迎えようとしている
まだ緑色の草地も まだ赤や黄色に色づいたままの木立も 薄墨のような夜のはじまりにもまして 白さを増してゆく雪の中に 影のように沈んでゆく
思いに沈む どこまでいっても あの時の雪は もうないのに
暗い停留所でトラムを待つ間に 髪を解いてみる 冷たい風に放して 縺れた一筋一筋を 指で梳る
どこまでも遠くなってしまった 記憶を 手繰る仕草のように
街路は雨に 窓は曇り 姿はみんな ぼやけて にじむ まだ 夜が続いている
それは 今日を包んでいる また 次ぎの夜までの 始まりの景色
夢だったかのように 思い出している
こんなに暗い外の風景に 灯りが滲んで もう 風景の形すら 崩れていってしまう
それは雨のせいだったのか
ときどき 思い出すと 忘れていたことに気付く
わたしの中に ずっとあるのにね
いつか 巡り合える それは 本当かもしれない
知らされないうちに 突然
まるで始めてあったときのように 何度でも
ここにいる ここを歩く ここに佇む
ここで 誰かに会う
切りつけるような風の中でも あなたに会う
それは 紛れもなく あなたかもしれない
髪が頬に散り 突き刺さるような風
一人で歩いている 一人で佇んでいる
ただ 過ぎてゆくものを 厭いはしない
みんな行ってしまえばいい わたしは ここにいる
欠けたもの そんなのは沢山あって 数えられない
欠けたままの わたし
まだ 欠けてしまっても そのままでも なにが足されても
やっぱり 欠けたままの わたし
隠れる 離れる
見えないように 誰からも
風にさえ みつからないように
夜の名残の中を歩き 今日の一日は始まる
夜に近づくように 一日の終わりに帰ってくる
いつもと同じなのに いつかと同じなのに
どこか違ってしまっているんだろう
ねぇ 一人っきりになってしまうって 想像できる?
できないから こうやって 話しかけるんだよ
ここにいる
どこにもいない
見つけてくれる?
いつも 待ってる
いつかした会話も 今日の会話も なにも違いはないんだ いつまでも わたしたちは一緒にいるね
2003年10月10日(金) |
一部 欠けてしまったもの |
捉えられなかった そのもの わたしの一部であったもの
あなたに仮託してみても それは あなたのものでしかなかった
だから わたしの欠けてしまった そのものは 自分で捜すしかない
なにか 切り離されてしまった のかな 宙ぶらりん みたい
いとが なくなって とても 自由なはずなのに へんね
だから いつものように そこに いとがあるみたいに 過ごす
こんなに風が吹く
夜は もう間近
雨がしぶきになる
いつか聞いた 海鳴りのように
記憶をまさぐっている
まどろんでいる
雨が降っていて 水溜りの底に 揺れているように
沈んでしまおう まどろみながら
雨粒は いつも輪を描いて 慰めてくれるだろう
急いだわけではなかった ただ この間だけだと思った
幸せだった たとえ 悶え 泣き 喘いでも その瞬間ですら
だから もう忘れない あなたの温度も じっと 抱き合った時の
深く 深く 沈んで行く その 感覚
わたしの身体 ぴったりと あなたに重なり その間だけ 沈んでいった
今は 思い出す それだけでいい
失うこともいい
失わなければ もう一度 満たすこともできない
いま少しづつ 失おう
いままでも そうしてきたように
そうして また 少しづつ 満たしてゆく
自然なこと それが何かと考えなければいけないほど わたしは 不自然なのだろうか
ただの わたしであるために 思い悩むことなど ないはずなのに
ときに 怯えるよ
終わってみる 止めてみる もう いらない
休んでみる もう前には進まない
帰る 戻る 行ってしまう
眠ってしまおう じっとしていよう どこにも行かない
息だけを 聞いている
あらかじめ考えたこともなかった 出会い始めてから 時間が流れるとともに 驚きでいっぱいだった
いま 少し時間を遡ってみる
考えてみる わたしが いないこと
いつものように 日々は過ぎるだろう
たまに誰かが わたしを思いだすかもしれない
それだけのこと
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