恋文
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あなたの表情も ことばも 仕草も
いつまでも 留まるように
わたしが なくなるまで
これは、真実のわたしの心の表しなのだけれど。 最初は、直接に伝えることのできなかった、ある人への恋文だった。 それから、行く当てのない恋心だったり、ただの感傷だったり。 あるいは、きっと過去の恋を思い出したり。 ただ、そこにあるものに感じたり。 そうして、わたしの知る人たちに感応して。 それとも、無理にも綴ったことばの群れすら。
みんな、それはわたしの中にあり、入ってきたもの。 あぁ、これはわたし自身への恋文だったのかな。
手をつないで 歩こうね
いつか ことばも少なく 歩いたときのように
結んだ手から 伝えようね
ことばにならない 気持ちは こんども
ことばにしようとすると ことばにならない
もどかしい思いを むりに ことばにして
なおさら もどかしくなる
あんまり 雨が 降っていて
山は 雲に すっかり 消えて
足もとに ただただ しぶきが 散るばかり
あなたが触れたように 思い出しながら なぞるのだけれど
きもちが ふと ともって 消えた
かたい わたしを 抱く
あんまり眩しくて 歩みを 止めた
ポプラは 真っ直ぐに 黄金色の葉を まとっていた
まだ緑色が 広がっている 草原で 牛たちが 立っている
また 歩き始める 陽は もう低くても 遠くまで 照らしている
まっすぐに いたいけれど
いじけたり たゆんだり うしろを向いてしまったり
それでも 捨てることのできない わたし
また前を向こう
知らない
どうやって 知ろうか
いつか 少し 分かち合う 知ること
それが わたしたちの 今のまま
わたしの装い できたらいいな あした
わたしを 知っている ひとに会える
いつか雨があがって 街灯が照らす 落ち葉が 光っている
風が やわらかになった あしたは 晴れるかしら
もう少し 留まっていたかった そこに
その時にだけあったのではない きっと今も わたしの中にある そこに
小さくなろう 小さくなって
こんな強い風に 乗せてもらおうか
そのとき いたかった その場所に
届かないのは 知っている
それでは 思いだけを 小さくちぎって みせようか
あぁ どこに届くのかしら
どこにも 届かないのは 知っているのに
あなたが 知らない 知らない わたし
小さくちぎって 誰にも知られないように
わたしの肉を 切ってしまいましょう
なんにもない わたしになるまで
空に雲が 灰色で 部屋の中は 雨の音ばかり
世界が濡れているね みんな濡れている
赤くなった葉っぱも もう 落ちてしまって
そろそろ 灯りをつけようか
覚めるともなく 朝のくらがりに 横たわっている
外には ひたひたと 雨がふる
はだけた夜着の 足もとから 冷たくなる
くるんと 丸まってみる 腕のなかに わたしの匂いがする
わたしには いやな わたしと いい わたしが いるの
ほんとうは いい わたしだけで いたいけど いやな わたしも ほんとうは わるくないの
いやな わたしだって わたしなの かなしい わたしなの
いっしょに いようね
グレープフルーツを ふたつに切り きりきりと絞る
これは あなたのため
わたしには 指先に いつまでも 香りが 残っている
飲みこめば 飲みこむほどに かたまりになってしまう
行き場のない きもちは からだの なかから 押しあげられるように
そのときに ぽたぽたと あふれ出てしまうのだった
ことのえ といい ことのは といい どちらにしても まるで ささいな端きれの ようでは あるけれど
奥ふかくから あふれるように あるいは ひきだされるように
あがってきたものが やっと かたちになった 木の葉のようだね
目が冴えてしまった 明け方 まだ暗い部屋のなかで 自分に問いかける
どうして こんふうに すれ違ってしまったのか
わたしの居場所が 見つからないのだった
ベッドを抜け出して キッチンのテーブルで 頬杖をついてる
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明日から日曜日までお休みします。 まだ夏のアンダルシアの明るさに触れたら、もやもやも吹き飛んでくれるかな。
どんなにか心配したのに あなたは 帰ってきて 平気な顔をしている
わたしは 不安で いてもたってもいられなくて 無駄に電話を掛けまくり 果ては 外にまで電話を掛けにいったのに
あなたが軽んじているのか わたしが重過ぎるのか
あなたには わたしが流した涙なんて 思いの外なんだろうね
多すぎてもいけない
これは 多すぎるのか 溢れてしまうのか
なんだ こんな ちっぽけな 思いなのに
身体に はいってくる そのままに
いつか わたしを蹂躙した それは
多くてはいけない 溢れてはいけない
じっと わたしのものにしていたいのに
ひとこと ふたこと それが嬉しかったから もっと話そうよ
言葉の まだなかった あなたを 昔は抱いて 話しかけていたのだった
台所に並んで いま 隣にいる あなたが 問いかけてくることが 素直に 嬉しい
ほんの少し 近づくだけでいい 見えていなかった わたしも あなたもいた
ひとりで眠った 幾夜も
今ほど孤独では なかった
同じ褥に眠る あなたの息を 聞いている
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