恋文
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まだ雪は 凍ったまま残っている 裸の木々は ずっと向こうを 透かしている
記憶の中に そのまま残る 春も 夏も 秋も みんな この場所にあった
そうして またくる春を ありありと 思う
森の小道を 歩く 足下で はりはりと 凍った土が 崩れて行く
その音と 風の音と ほかにない
ひとりで 歩く
あなたが好き
あなたは いっぱいいて みんな好き
それは とても大切な わたしのきもち
いつも 好き って 言い続けたい
真っ青な空 なにもかも つき抜けてゆくような
あなたから 受けとった お便りは そこから来たのね
空を見上げて あなたの姿をみる きっと 暖かい
なんて 真っ白 まだ白い 冷たい 寒い
まっすぐ歩く 風をうけよう
頬は ちりちりとして 耳は きりきりとする
黒い枝には 鳥の声もない
だけど 真っ直ぐ歩く
この空の つづきを想う
見上げると 白く透きとおった月
同じようではない 月がそこにはある
くびすじに ふれた指先 そのまま 持ってきてしまった
もう わたしひとりで うまく留められるんだよ
また雪になりそうな 静かな夜
窓をあけると しんしんと 肌にしみる つめたさ
空に しろい月 いつか 見たような
遠いあなたは やすんでいるだろう
あなたが そこで 耳をかたむけるように
わたしも ここで 聴いている
昼下がり ほかに 音もない
なにか聞こえてきたらいい
思うこと 感じること ただ 毎日の なんでもないことに
あなたと わかちあおう と 耳をすます
遠くの音を 聴く 夜は
あなたの 息を 探す
きっと 穏やかに 繰り返すだろう
南に行きたいと 思った 南の海の近くには もうすぐ いちめんの アーモンドの花が咲くらしい
その 真っ白な花は きっと桜の花のようじゃないかと 思った
あの 桜のような
暗い坂道には 誰もいない わずかな灯りは 闇を深くさせる
なにもない 向こう側を 見ている もっと 向こうを
雨は 霧のように 流れる
街灯の光りが 仄かに けむる
あしたは とおい あなたも とおい
時がめぐって また出会う それが 今 このときのために あるなら
なにもかもが あるべきことだったんだ あなたがそこにいて
なにも いらないことはなかった
雨が降っているのね
ひたひたと 音の聞こえる 夜の底
ひとりで いるのね あなた
ようやく差出した 手を つないで しっかりと 結ぼうね
夜が明けて あしたは 晴れたらいいね
鴨は 眠るだろう ゆりかもめも 眠るだろう
わたしは 夢になろうか
日溜りの公園は どんな音も なくなってしまうだろう
聞いているのは あなたの声 夢が覚めたように
にぎっていた その手の暖かみを 残していた
また 眠るだろう みんな 眠るように
思いがけずに見た オリオンは とても低い空にあった
月は 高い空に 白く 輝いていた
黙って そこにいる ふたり
あなたの 息しか 聞いてなかった あなたの 震えしかしか 感じてなかった
それよりほかの 何があったのかしら
その人は まだ明けない 遠い夜の底で 眠っているだろう
つながる記憶を 手繰り寄せて その人の夢に 渡れればいいのに
その木 大きく枝を広げて 立っている
まだ暗い朝から 鳥たちは やかましい
影絵のように 空に映る 重なる線と線の どこに隠れているのだろう 鳥たち
ただ立っている その木
鳥たちも ただそこにいる
夕暮れは あしたに続くね あんなに青く 暗くなってしまったのに
朝は まだ暗くても 鳥たちは さえずり始めているね
だんだんと 明るくなる 空に重なる 白い雲は
わたしたちの 結んだ手のようだね
なんにも できない わたし でくのぼう
ことばに 応えられない なんにも できない
でも ここにいる あなたに近く いたい わたし
2005年01月08日(土) |
あなたへ とどきたい |
あなたが どんなだっていい ね どんなに かわったって あなただと わかるよ
あのときの あなたと いまの あなたは ちがうと あなたは いったけれど わたしには おなじ あなたなの
ね いつでも かわらない わたしの なかの あなたは
こんなに とおくて どうしようか どうやって てを さしのべようか
こうやって あなたに とどけよう ことばにのせて
その街に 泰山木は どんなに薫るのだろう
明るい陽射しの下で どんなに輝くのだろう
遠くにいる そのひとに 伝えよう
思いを馳せている その香りを いまも纏っていると
ゆたゆたと 時を忘れてしまおうね
風に乗って なにもかもが ただの 不思議な音
冷たい手も むすんでいると 暖かいね
肩に ことんと 触れた あなたの重み
ありありと 残っている それは 記憶ではない
何度でも めぐり合うための 確かな あなたの姿
眠りの底に ただよっていると 悲しい夢も 怖い夢も なんだかおぼろげだ
泣きたくても 叫びたくても なにもかもが ぼんやりと 溶けてしまって わたしも 溶けてしまって
あぁ どうやって 帰ろうかと思う
立ち止まろうね うずくまろうね もう歩くのが いやになってしまったら
じっと待っていようね きっと差し出してもらえる その手を
泣いていいのよ 甘えていいのよ 見えない明日は 忘れていいのよ
あなたと過ごした その時のままに そのままとどまって 一緒にいようね
思い出を抱いて 眠ってもいいのよ また あなたに 会える日まで
血のように じかにわたしに 結びつけてよ
抱きあった からだも あわせた くちびるも
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