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雪を のせたままの 草の あいだ
黄色い花が のぞいている
まだ そらには 雪の気配
灯りだけが 白々と している
トラム駅には だれも いない
帰り道を たどりながら
そこにも 行こう どこにでも
迎えにゆく
水をながす 音だけを 聞いている
そとには 雪がふって
なにもかわらない いちにちだけど
すこし また おもいでが ふえた
コンフェッティが 地面に 散っている
もうすぐ 花も咲くように
かたちに ならない わたしを みている
もう 花芽が でている
産毛に 露を たたえて
風のなかに いる
髪を はらはら 梳かして
もう むこうに 行ってしまった
わだかまった 嫌なことは 忘れる
たくさんの 好きなことを 思う
そうして 眠る
もう 冷たくない
風は はげしくても
森は どよめいていても
ぽつぽつと 歩いている
聞こえる ことを
きいている
見えないから なお いたましい
手を どこに さしのべれば いいのか
待つばかり
おとは 雨に とけてあって
ひかりも いっしょに とけてしまった みたい
夜のおとを きいている
どこに 向かえば いいのか
ぐらぐらと 定まらなくて
おろおろと たよりない
ふとんを被って 真っ暗の なかで
じぶんの 匂いだけに
まるまっている
モノクロームの または 褪せたカラーの
夢に よみがえる 記憶の ような
そのまま わたしたちの 表情
まだ 氷は 厚い
もう 朝は それでも とけてくる
鳥たちが 帰ってきた
声をきく
あなたと 見に行くことが できなかった
その港を 思い出す
岸壁には ゆったりと 波が 寄せているだろう
かもめは いつまでも 空にとどまっている
そこを 歩いていよう
少し坂をあがると 森の入り口があって
そのまま 歩いてゆく
木々は枝を のばしている その小道
あなたが 寄り添っている
まぼろしを みている
そのまま みていたい
たどりつけないと しっている
夕方の あかるさが すこしづつ もどってきた
雨も あがって 雲のあいだが うすく 朱い
あなたから あずかった
それは あなた だから
わたしと いつも いっしょにいる
かたみに袖をしぼりつつ
そのほうが いい
わたしたちの かたみは おたがいの はんぶんの わたしたちのこと
末の松山に 浪は 越すことはない と
あなたに かかわるものに 触れてゆく
きっと 失っては いなかった
まだ そのままの わたしたち
ずっと つながっていた いままでの その さき
ふりかえりながらも たどってきた その まだ むこう
あたらしくなる わたしたち いつでも
にじんだ 窓のあかりを 見るともなく とおり過ぎてゆく
雨かとおもう 冷たさが かすかに しみる
まだ 雪が残る こみちを 歩く
わずかに ひかる
霜なのか 雪なのか
草は じっと うごかない
木の枝も まだ 影のまま
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