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あなたを 迎えるなら
こんな ひかりのなか
いま 雨が あがって
たちあがる
春の いぶきのなか
ふり始めた 雨のなか
いつもの 駅を降りる
知らない町の ように
立ち止まる
その雨を たぐりよせ
花をおもい 香りをおもい
その 記憶のなかに
この空の この木立の その色も
いっしょに おとの中
木の枝が おおきく 揺れている
雲は どんどん ながれてゆく
いつのまにか 窓は
しずくで いっぱいに なっている
朝の あかるい 空のいろ
まだ 夢のなかに いるみたい
ふと たじろぐ
窓の外を だれか
通りすぎると みえて
それは ただ木の枝の
揺れる影
いつもより ずっと 夢のなかに いるのに
いつまでも まだ 遠い 夢のなか
あなたのことを 考えてすごしていよう
ほかのことに 思い煩わないように
まだ花を見ぬ 花ぐもり
痛みとともに 身体中が ひりひりと 反応する
音もなく ふってくる 雨に 風は ほんの少し 吹いている
ぽつり ぽつり 地面から 顔をだしている クロッカス
いつのまにか ベランダの プランターにも すみれ
やっと 気づいた
それは よく 知っている
こらえきれず あらわれる
わたし そのもの
もう すでに 同じでは なかった
霧のむこうに なにが 見えるだろう
おそるおそる 踏みだす 一歩 また 一歩
わがままなときだって あるもん
なんにも したくないもん
きょうは とっても めんどうくさくて
もう いやなの
とめどなく 繋がってくる
そのときの なかに
とどまって いたかった
たしかに と はかれないもの
それだけで とほうにくれる
窓の外 ばかり 見ていると
歩いてみようと おもった
雪が どんどん 迫ってきて
いつか 上着の なかまで 風が はいってくる
まだ 歩いていよう もうすぐ 家に 帰る
わたしが いること
あなたが いること
ふたりが いなかったから なにもなかった
そんな なんでもないこと
丘の上の牧場に至って 空が 黒くなっていた
とつぜん ばたばたと 木がざわめき 木立ちの間から しずくが落ちてくる
いつか 白い小さな粒が 顔といい 頭といい ぶつかってくる
風は 真っ向から やってくる
髪が ざわざわと 顔をなぜる
濡れそぼって まだ 歩いている
ずっと 黙ったまま 目は どこを 見ているのだろう
いっそ 声をあげて 泣いてしまえば いいのに
失うのは いつも
いつもの ことなのに
バイバイと いって 忘れるまでの
長い時間
ずっと ふって
こんなに つもって
青い空に なって
こんなに ひかって
それから まだ ふってくる
巡りあえない日も いつも ともにいる と
あなたに かかわる どんなことでも
失っては いない
好き と いう
わたしの きもち
とどいてね
わたしが わたしに した 約束
しなくても そのままの 気持のまま
なんでもない 約束 だけど
いつも わたし そのままで いたい
なんども 雪はふるけれど
陽ざしが すこしづつ 長くなって
草木をおおった 雪が ひかっている
過ぎたことは 思い出だけでは なくて
いまも ここにある
まだ 変わらない わたしたち
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