恋文
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いつも 雨に濡れたような 朝
海の底を 歩くように 影と いっしょ
どれほどのことが と いう
まるで ぼうぼう と
ひろがった 景色のようで
どんなにも はかれない
いちょうの葉は その色のまま 石畳の 模様のように
夜とともに やがて 影のかたちになる
外れていって 戻れない
わたしを 失ったあいだ
なにを しているの
歩いていると はらはらと
それは 美しい 色で
道は どこかに 行き着くだろうう
歩いて いたいと 思った
失った そのときに 終わった
ままなのに
どうしよう
あぁ いまから わたしは そとに でるのだ
鎧の ように 香りを 纏おう
曇り空のした 黙って 歩いている
空も 地面も 同じ色
どこに 行きたいと 言えるだろう
ともる 灯りは 見え隠れして
どこまでも 続いている
その 狭くて急な 坂道は
落ち葉が 吹きだまって いるだろうか
いまは 様変わり しているだろうと 不思議ではない
ありありと 見るように たどっている
夜の 暗がりは 手探りで 夢に 帰ってゆきます
目を 閉じて 同じ 暗がりを 見ています
さぁざぁ と 雨かと思い それは
一本の木は すっかり 黄色い葉に 覆われて
突然の風に 渦のようにも 見え
降り注ぐのだった
わたしが ひるがえると
わたしの 匂いがする
抱いて いてみたい
小さな木 葉っぱが 真っ赤になって
ほのおが 立ってる みたい
すっかり 暮れる まえに
靄に かくれて いた
見えなくても いいと 思った
そのまま わたしのものに しておこう
赤く染まっていた 葉っぱも 半ばも 落ちてしまった
落ち葉を 積もらせて 通りは まっすぐ 伸びている
尖塔の上に わずかに 灰色の空が 見え
黒い 厚い雲が 蓋をするように 覆っている
夜が 降りてきた
突然 雨が降って 風が 雨を散らして 草は ざわざわ流れ
雨のあとの 通りは 静かで
ほとほと 歩くと
風は 思ったよりも 暖かだった
さっきまで 降っていた 雨が やんで
雲のあいだに 銀色の空が 見える
煙突から するすると 煙がのびている
木の燃える においがする
話すことの できないことを 積み重ね
いくつも いくつも
置いてきてしまった どこか
思いもかけず と いうが
思い込みが 違っていた だけだったのだ
それでも ひっかかった 小さなものが はなれない
ただ 来たように 歩いている
どこに たどりつくのか 知らない
あなたが 夢で逢えるよ と 言っていて
昨日 やっと あなたに 逢えた
また 逢おうね
少しづつ 明るくなる空
川面には 川のいぶき
曇った窓に ぼんやりと
じぶんの 顔を映している
きれいに きれいに
指から こぼれて いったらいい
足もとに 落ち葉を 踏む
木立に 葉の 擦れ合う
それだけに なる
振り返るのが こわいから
ほとほと 歩き続ける
まっすぐ 行っても
こわい 道
まだ みどりの 草むら
花が 咲いた みたい
雲には わずかに白く ひかりの面影を 残して
もう黒い 影となってしまった 屋根の うえ
光の輪が 流れてゆく 半円
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