恋文
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ぱたぱた あわただしく していると なにもかも わすれて
ふと てを とめると しずかだと きづく
霜で まっしろに 飾られて 草は まだ みどり
静かに うなだれ 空は はいいろ
日が暮れる 道は くろく 濡れて
川は 名残の光を かすかに 残し
行きかう ひとびとは 影のよう
闇を映して 凍る
割れた 氷のかけらも そのまま
空が 落ちたように
ふと 気づく
気づかなければ いいのに
こんなに 静か
わたしは いくつもの かけら
あれも これも みんな まちまちな かたちで
わたしなのに しらない かたち
本当は 櫛では ないので
梳くわけでは ないのだが
今夜 櫛のように 髪を 梳いてみた
髪を 留めよう
これは あなたの 櫛であり
わたしの 櫛であり
声を たてても
そのまま 消える
そこかしこ 真っ白に なって
音も 凍っている みたい
一日が 終わってみると まるで なんにもなかったみたい
それでも あしたのことを また おもう
ふいに 水の流れる 音がする
風がわたる まだ 暗い 木々を揺らす
夢うつつの なか
じぶんの 温みのなかに とどまっている
灯りを ともしてゆき やっと 人の気配がする
換気扇の音 冷蔵庫の音
鳥たちが えさをついばむ音も
部屋のなかに いっぱいに なっている
ずっと 夢の中に いられたら いいのに
あなたに 会おうね いつも
だれか ドラゴンに なりたいなら
わたしは ドラゴンに 食べられる
小さな 果実に なりたい
氷の 張り詰めてゆく 音がする ような 夜
空に 真っ白な 半月
くるり まぁるくなって まっくらの あったかい やみの うすいまく すかして どこかの せかいが あっても まだまだ とどまる ちいさな せかい
夜は しらない街
あなたの 手をたずさえて
ほの明るい 通りを 歩いている
思い出だったのか 夢想だったのか
それは 影のように 映っていた ひとつの姿
近づけば 逃れ いつも 離れない
まだ暗いままの空に 雲も白い 月も白い
草むらも きらきら 光っている
川の流れは 早かった
岸辺の よどみには 鴨たちが 休んでいる
広場にさしかかると 紙飛行機を 飛ばしている 人がいる
飛行機は くるくると いつまでも 輪をえがいている
鏡のなかに 見るたびに 少し
わたしと 思いたい わたしだった
少しだけ だった
わたしは どこに いるだろう
雲は黒く 幾重にも重く
川面は暗く 流れも見えず
空と川の わずかな すきまに
もうすぐ 光を迎える
あっというまに暗くなった街に。 オレンジ色のレースのようにイルミネーションが輝いて。 クリスマス市の人々は影のように。
その店は、いつものたたずまい。 レースが窓にかかり。 ピンクのリボンが飾られて。
わたしひとり。 夢をみているうように。 たちどまっている。
眠りにおちる前に からだを ゆだねる
わたしの なかの わたしに
まだ 月は 残ったまま
雨は 降ったり 木の枝の うしろ
雲が 流れている
夜のあいだに 雨が降った
置き去りに されたみたいな 暗がりに
濡れた草が たわんでいる
柿は KAKI 梨は NASI
フランスで 日本に出会える
果物は 親しいかたち
わたしの かたち
つくっている
そのまま
思った まま いれたら
ひかりの 鎖 ひかりの 星
いしだたみを 濡らす 夜毎に
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