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わたしを わたしと いっしょに たずさえてゆく
変えてみる 変わってみる
いつまでも わたしがいる
まだ見もしない わたしもいる
今だけでいい というには まだ早い
窓をうつ 雨のむこうに かすむ花の色
傾いだまま 進みつづける
辿りつく その先も おぼつかない
それは どこに 沈むだろう
鳥たちは もう しきりに 啼きかわしている
木々が やがて 色をとりもどす
あの林を 歩いていった
季節の 移り変わりと いっしょに
辿りつけなかった
いまさら と 思うが
そこには 行けないとして
まだ 歩き続けるしかない
近くもない 遠くもない
それは 雪のおと
雪になれない 雪は
雪のように 降る
戻れない 過去も
見えない 未来も
いまここにいる わたしから 続いている
息を してみる
どこまでも いつまでも
ただよって いたいと
いつか しずみはじめ
あらがう てあし
息苦しいのは なにが あったからでもない
じぶんの まわりに くるり 輪をえがいて
まんなかに 座っている
ときならぬ 雪に
花は 色あせて
どこも 白いばかり
花は 凍える
灰色の 空の下
みどりの褥に 眠りたい
ちいさな花は いちめんに咲き
大きな木からは 花びらが 散るだろう
わたしは なんのかたち でもないように
ちくちく する わたしは 好きじゃない
まぁるく なっていたい
どこにでも 知らない わたしがいる
どこにもいる わたしは おかしな かたちになって
まるで みんな いやだと いう
たそがれの 町
ガラスに 映る 影は ひとりで どこかに ゆくだろう
わたしは 家に かえる
夢のなかに 帰ってゆくように
外は 薄靄にけむっている
ゆっくり 歩きだそう
ただよう うちに 朝に たどりつく
つめたい側と あたたかい側が
おんなじ 毛布に くるまって
ほのおの かたちを あつめている
まだ あかるい空
ふと 目を そらせてしまう
こころの 翳り
どこにも 持ってゆけない
いつでも いっしょにいる
帰りたい と おもう
帰る ところが ない
春に 花は 咲いている
それが バランスなら と 背中を つん と 押してやる
やじろべえの ように あっちに こっちに 傾くのではなく
こっちにだけ 傾いて いればいい
ここからは 見えない
手探りで たどる
道は こわい
ひとつにして 全部の わたしが どこにいる
それなら 差し引きし なくしてゆき 最後に
なにか ひとつ 残るだろうか
ふと 置き去りにされたように 思い
ここから いったい どこにゆこうか
立ちすくむ 足もとも どこにある
傘を打っていた かすかな音は いつか消えて
霧のなかに いるように 立ち止まる
どこか 知らないところに 連れていって くれるような 気がする
ここに いない わたしは 何してるかしら
風のおと 雨のおと
暗闇は 心地いい
このまま 朝にならなくて
そのまま
聴いている ものだけで いいのに
光のなかに さぁさぁ と 雨のおとが する
緑だけ ひかっていたらいい
花だけ ひかっていたらいい
わたしは そんなのを みるだけで
まだ 歩いていこう
ふと 思い出すと
時が すぎていったのだと
ただ それだけだった
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