恋文
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ひかりが なにもかも とどめている
影は なんにも 動かない
透き通った 葉っぱも 動かない
いくらでも 変ってゆく
なにを思っていたのだろうと 考えるまでもなく
変ってきたのだろうか
ふと みた じぶんの腕が
こんなに 細いなんて
この世界が 坩堝だとして
溶けてゆくのは
喜びだとか 悲しみだとか
憎しみも 赦しも
みんな 抱いたままの
しずかに とけてゆきたい と おもう
ひとりの わたし
毎日 別の世界に いるみたいに
違うわたしが 生きている
ブラインドの 隙間から 洩れてくる
ひかりは 雨の色がする
また 風がでてきた
もうすぐ 雲と同じ色になる
雨でも 小鳥は やってくる
緑は 首を うなだれて
軒には いくつも 水の珠
羽は しっとり 重いだろう
もう 戻れない 立ち止まれない
そこにいた わたしは もういないから
いくらでも 背負うしか ないではないか
まだ 歩いてゆく
普段 しないけれど
夜更かしをして
食べてもいいや と
口にする なにもかも
美味しいのね
森閑としている
なかから 聞こえてくるような 幻のような おとが
からだの かたちを なぞってみる
暗がりに 帰ろうとする
記憶をたどる
いつか 夏の夜の香り
とつぜんの 風に揺れる 枝から 花心が 落ちてくる
まだ 雨の前に 雨のおとのように
干潟の さかなの ように
少しだけ 泥のなかを 進んでみよう
どこにも 泥しかないから
どうやって 進もうか
息だけは してみよう
落ちた木の実 雨が さらっていった
しずくと いっしょに また 落ちてくる
風が でてきた
空は ミルクのように 重くなってきた
揺れている 木の枝、草
わたしと いっしょ
暮れてしまうまで
あなたの 形見に 触れる と
まだ ここに いられる
曇ったガラスの 向こうは
いつか 梅雨の日 寒かった
同じ空 みたい
雨も 風も やんで
みな 影になる
眠りにつく まえに
通り過ぎるだけの 町のなかに 通りが のびている
途切れた屋根 森の木々
思いを巡らせば 知っている道に つながってゆくだろう
覚めるのが 億劫になって
しばらく 夢の住人に なってみる
雨が音をたてて 降って
濡れた木立の かたわらに
そこだけ 光があたっているみたい
紅い 薔薇のしげみ
雷の音がする 空は暗くなって
わたしは ふんわり ふんわり 髪を梳かしている
風が止まったみたい とっても静か
なのに もうすぐ 雨が降るだろう
わたしは 髪も梳かしたから もう 眠ってしまおう
振り返ったら まだ あなたたちが いるから
まだ 振り返っても いいのかなぁ
夕日が いくつもの かけらになって 降ってくる
草も木も 夕日に きらきら 濡れている
行き止まりは どこを どうしても 行き止まりで
押しても 引いても しかたがない
とぼとぼ 徒労をかみしめて 帰ってゆく
夏の匂いに 近づく ふんわり香る 木の下を 歩いて
夢を さまよううちに 朝に たどりつく
辿りつけない 夢は いまも さまよっているだろうか
どこに 行くだろか
どこも明るい 街角に
ふと 見失う 行方
あなたの一日が 過ぎてゆくでしょう
わたしの一日も 何の過不足もなく 過ぎてゆきます
毎日 あなたなしに 過ごしているのに
どうして 思い出してしまうのでしょうか
安心の 音がする
雨は どこでも いっしょの 音で
濡れていたい 気がする
どこに 眠っているだろう 鳥たちは
濡れたまま 木も 草も そよがない
止まってしまった 夕暮れ
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