恋文
DiaryINDEX|past|will
立ち止まって 振り返るのは
たどってきた 道すがら
ここにはないものばかり
春を前に 別れを告げた
春から たくさんの いのちが 始まるというのに
ふりかえり ふりかえり
春よりも前に 帰りたい
朝 景色の色がはっきりとして 鳥の声を 聞く
影だけが 立っていた 季節がおわり
まだ ここに とどまっている
時間も 空間も
思い出と 夢で
埋めてしまおうか
ひとりで ときがすぎてゆく
なにが 変わったわけでもありません 特別なことでもないのです ひとつ 年を重ねました
お祝いのことばに すこし照れて
やはり なんだか 特別な日なのかも しれません
ブランコに乗って 遠くに 靴を 飛ばす
失った靴を 取りに あなたを 負ぶった
夏の夜の 重さ
その日 労働を終えて 私たちは 商店の並ぶ通りを歩き どこか 安く飲める店を 探したのだ
明るい 殺風景な 店のなか ひとつのテーブルに 顔をつきあわせて
へこんだアルミの燗器から 分けあう 酒は 胃の中にも 熱いままだった
天六の 酒は うまかった
あいだは からっぽだろうか
きのうと きょうの あいだ
いままでの あいだ
あいだを生きている あいだ
なにもかわらないとて 一日がすぎ
明日も なにごとがなくてもいい
ずっと 続くのなら
夢も とどこおって ゆたゆたする
もう ずっと 眠っていたみたいなのに
まるで 魑魅魍魎みたい
考え始めると いくらでも わき上がってくる
いずれ どこかに 行きつくまでは
まだ いくどでも 踏み迷うだろう
日は もう 暮れてしまう
あっちに ぶつかり こっちにも
後戻りをして 進みあぐねて
ずっと 歩いている あいだ
まだ 行くところが ある
遠くにいる ひとを 思ってみます
どんなに つながりが 薄くなっていても
ちいさな できごとが 思い出させて くれるでしょう
風は 冷たいけれど 陽のあたるところは 暖かいです
みだれた 髪の 鏡のなかで 微笑んでいる
わたしは わたし
どんなに 変わってしまえなくても
2008年02月13日(水) |
それは 違和感なのだろうか |
からだを 厭えば どんなにも 嫌になる
折り合いが つかなかれば
できるような 反抗の かたち
殺して しまおうか 殺しても よいならば
わざと 痛いと 言わせてみる
あなたに お誕生日のカードを 送りました
どんな お祝いを 書いたらいいのだろうかと
カードに 言葉を書く手を 休めてしまい
振り返る 日々 そのままに まだ わたしたち どんなにも 変わってしまったとも 思わない
また 幾度も いつまでも 出会い続けようね
そんなふうに 書きました
わたしは オプティミストではない
必ず 犠牲があり 悲しみが あることを 知っている
それでも やっぱり 痛みは
痛いのだ
眠っているあいだ 忘れてしまいたい
そんな 痛みは
抱いたまま わたしの からだの
一部になってしまう
裸になった 細い枝ばかりの 木々のあいだから 見える 水鳥たちが 漂っている
硬いパンを 砕いては ほうりなげる 水面に さざなみのような もっと ちいさな 波が おこる
子供達は 鳥たちが 好きだけれど
帰ってきた そのあと
きみは うさぎを 抱いていて なんだか 満ち足りて いるではないか
午後のひかりが ゆっくりと 冷たくなってゆく
傷ついて たやすく 忘れてゆくだろう
忘れなくて とどめて
残っていたら
わたしのもの
すこしづつ 擦り切れて いるのだろう
気づいたとき なにが 残っているだろう
わたしを 思い出すとき 影のようだと 言った ひとがいた
それから 時が ずいぶんたって
わたしにも いつか たくさんの 影のようなひとたちが いるのだ
影同士は きっと すれ違うこともないのだろう
まだ 始まらないことも 始まるだろう
ばらの花が いっぱいに 開いている
手探りで 求めても なにも 触れない
まだ 目を とじたまま 立ち止まっている
また あしたが来るね
あしたは ひとりで 待っているの
あなたも 待っているのね
わたしも いっしょ
急に 心細くなったけれど 逃れるところが ないよ
闇にまぎれたほうが よっぽど 心地よい
じっと 自分の音だけを 聞きながら
|