恋文
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気づくと そんなにも 時は 過ぎている
まだ 佇んでいる 自分の 影
過ぎていってしまう
取り残されたような 気持ちで
空を 見る
ひかりが 傾いてゆく
いま そのときにも なんて まぶしい
空の色が 重く
風が 冷たくなった
くすんでいる 緑
雲の切れ目から 小さな 青空を 見ている
夕日があたる 壁が 目に痛い
いちにちが 終わってしまう また
なんどでも
だから なんどでも
もう 行ってしまうんだな
昔に 帰ったみたいな 日々は 終わってしまう
いつのまにか 夜の訪れも
こんなに 早くなってしまった
自分らしいこと とか
自分でありたいこと とか
まっすぐでは ないから
少し 冷たくなった 風にあたりながら
通りを 見ていた
それは 嘘では なかった けれど
ぽつんと 置かれて しまった
居心地の 悪いもの
どこかに 蹴散らかされて しまったから
やっと 笑えた
みんな 過ぎ去ってゆく
今は まだ ひかりのなかに とどめておこう
綿毛が ふんわり ただよっている
たどりつくのは 石ころの 川原だとしても
ふんわり きらきら かがやきながら
草が ゆれる
しんと 静まりかえった 午後に
道は 白く続いている
雲もない 空の下に
懐かしいような
音を 聴く
聞こえない 音も
闇の中
遠くは ひかりに かすんでいる
部屋のなかは ひっそりと 影のなか
時計のおとを 聞いている
風も ふと 立ち止まる
ひかりは 照りかえり
午後は 静まり返る
誰もいない 昼下がり
わたしも いなくなる
影が ぽつんと 落ちている
ラジオからの ことばが 漂っている
夕日の 照り返しが 影を 縫いつけて
風が とまっている と おもえば 草が ゆれる
まだ 暮れない
夜が すこしづつ 早くなる
藍色が 濃くなって
それでも 子供の声が 響いている
明るい いちにちが 過ぎて
ゆっくり 藍色に とけてゆく
雨のおとだけに なってしまったみたい
会話も 濡れて 流れる
花も 草も 透きとおる
目のなかに 透きとおる
影も はっきり のびるけれど
じぶんのかたちも 透きとおって しまいたい
雨が降っていると 気づかなかった
やがて 雨の音だけに なった
雨がやむと いろんな音が
もどってきた
水面が きらきら ひかる
水の底にも ゆらゆら ひかる
輪になって
どこからか 洩れ聞こえてくる かすかな音楽
暮れてゆく 空のいろのように
物音も 声も いりまじり
むくげが 咲いている 木陰
青い花が ますます 影のようになる
誰もいない小道
草花が揺れる
屋根のむこう 丘の稜線に
光がしずんでゆく
心配事は つきないけれど
そうやって 毎日がすぎ
どうにか なってゆく
つややかな 水のにおい ひんやり と
暗くなった 道だけれど
ぽつり ぽつり 水が ひかる
昼顔が 咲いている
日陰の草花が ゆっくり 揺れる
岩の間を ぬってゆく流れ
空が あおくて
気が遠くなりそう
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