恋文
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どこか 行ってしまいたい
そのときに ここには
わたしが 影のように
座っているだろう
宙ぶらりんに 浮かんでいる みたいな 一日がおわる
もう沈んでゆく 夕日が まぶしい
見慣れた 窓の外の風景も
ゆっくりと 変わってゆく
何も とどまっていない
帰ってきても おなじ
幾たびでも まだ
続けること
ふと 金木犀のかおりが したように おもった
忘れてはいない
日本では もう 香っているだろうか
声のとどかない 彼方に 耳をすましてみる
待っている声は 聞こえない
曇り空のした 歩き始める
きょうが 始まれば
やがて 晴れるかもしれない
まだ こんなに 明るかったんだ
ひかりで けむるような 丘の上の木々
帰りみちも 光っている
切り取ってきたのは 幾本かの すすき
風のわたる 野原を 思っている
野ばらの 実が まあるく 赤い
野あざみの 種も もう 散ってしまった
ちいさな 花たち また こんどね
まだ 明るい空 緑は いっぱい
だけど また 今度ね
また 会えるね
花の町を 歩いています
なにも 思い煩わなくても いいのです
穏かな ときが流れます
木に 登った
枝の 葉っぱのなか 黒い
猫の 花
夕方 昏い 空の下
雨のあと
ばさりと 揺れる
夜は まだ 深い
手探りで すすむ
肌が ひんやりする
なにもかも 疎ましくなって 黙りこむ
自分の姿を 思えば また 疎ましい
丘の上には 灰色の雲 ぼんやりと霞む
湿った地面に ぽつりぽつりと 赤い実が 落ちている
ひんやりと 朝の風
生きていれば 辛いことも 悲しいこともある
生きていれば 嫌なことにあい 誰も信じられないかもしれない
生きていれば でも 楽しいこともあり 沢山の出会いがある
生きていれば あなたに 逢える
わたしたちが 立っている
右を見て 左を見て 上を見て 下を見て
そうでなくては 倒れてしまう
闇が ひんやりと ふれる
まるくなって ひそんでいよう
あしたが やってくるまで
誰もいない 階段を降りる
明るい 窓の外
取り残されてしまったような 午後
帰り道も わからないほど
遠くに きてしまったにちがいない
見知らぬ道が ずっと 続いている
影のなかに 残っている ちいさな 水溜り
ぽつんと 枯葉が 浮かんでいる
窓が 金色にひかる
鉢植えの 花も 金色に透けて
今日は 終わるけれど
明日が また やってくる
みんな いいよ と 言いたい
移り変わる どのときが いいのか 知らない
まぶしい 光が いま 落ちていった
残ったひかりが ふんわり包む
いまが きっと いい
窓をたたくのは 雨の音 風の音
遠ざかったあとに 残っているのは 時計の音
音もなく 降る雨は
雨のようでなく
綿毛が 散っているように
風に漂っている
沈黙のあいだに 置き去りになる
雨の降りそうな 午後
夜になって
さらさらと 雨が 降りはじめた
窓の外は 草むらの 匂いがする
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