恋文
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傘のなかでも いつしか 濡れてゆく
どこも 雨
灰色の重い空 だけれど
肌に馴染むように 寄り添っている
一日は なにもなく 過ぎて
ここにいる わたし
影が 斜めに 延びる その
木々は それも 影絵のように
立っている
ほとほと 歩く その前のほう
白い 道ばかり
ふんわり ただよう
冬のひかりの なか
まだ 遠い 空を
見ることが できるだろうか
まだ明けない空を 飛行機が 横切ってゆく 光が瞬く
小鳥の声が 影のなかから 聞こえてくる
振り返れば ずっと 過去につながる
今日も いずれ その途中の 点のようになる
さぁ 進もうか
風に乗って やってくる 小さな雨粒
傘は ささない 風に むかって
歩いてゆく
いつか 風の勢いが増す 夜の音
暗くして じっと 聞いていよう
鉄線に つらつら 繋がる 水玉
つながる 端から ぽつん ぽつん
落ちてゆく
帰ってくる と いう
どちらに だろうか
ふらり ふらり 揺れる
どっちとも 決められない
居場所
誰か 変わったでも わたし 変わったでも
ない
あんまり 周りが 変わってしまって
た、のかな
かな、と かな
ん、
わかんないや
で、
ん、あぁ
まだ わたしだって
ちゃんと いる
かな
帰るところは まだ あるのだと 思えばこそ
まだ さまよってみようか
定まらないのは 夢の中も 同じだと
目覚めたまま 眠れない時が 過ぎる
金木犀のかおりを 忘れたまま 秋が過ぎ去ってゆく
窓辺に 菊の花が 咲いている
重い空のした 灯りがともる
行き交う人々は 街のなかに とけこんでいる
ぽつんと たたずんでいる わたし
濡れた舗道が ひかる
街角が 知らないところのように 見える
夢に もどったみたい
黙り込むとき 忘れたいことを おもう
饒舌なとき 見知らぬ不安に おののく
どこに いまのわたしを 語ろうか
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