恋文
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部屋のなかにも 綿毛が ただよっている
どこにいても 夢のなかに いられる
少しばかり 欠落する
その隙間から 行き来する
あちらも こちらも
どのことも みんな刹那だと 思えば
声にだす ことばも 宙に消えてゆく
現実と どこかで 交錯する
どこか 違うところを 夢見ている
暖かい午後
みどりの 漣が広がる
風の通ってゆくあいだ
ひかりも ついてゆく
いろんな もしも いつも せめぎあって
行き場のない もしも は
無言のまま うずくまる
綿毛がただよう みどりの 小道
風が運んでくる かおりも みどり
翳ってゆく なかに 溶け込んで
ひとつの ただの 形になって
もうすぐ 消えてしまおう
悲しい夢から 逃れる
ぼんやりと 差し込んでくる 朝の光
過ぎてゆく この春のなかの ただの一日
並んで歩く 影もない 青い空
雨のなか 駆け抜ける
まだ 雨のなか
いろいろな 姿に映る わたし自身は
それでも ひとつなのだと
風の中に ゆれる
どんなにか かすかな音をたてて 花は 散ってゆくのだろう
聞こえるのは 鳥の声ばかり
かたちは きっと変わるもの
混沌のなかにいて
わたしを 抱いている いつも
誰にも 聞こえないように 息をする
ひとりで わたしに なっている
揺れる わたしは いつも 風のなかにいる
鉄路では 草が刈られている 青い匂いが 満ちて
わたしを 染めてゆく 苦い匂いのなかで
揺れている
無限ではない あいだに
延々と 繰り返す
一日という 永遠
木蓮の炎 立ち上がる
空は また 暗くなり
風が また ぶつかって来る
残された言葉を 探ってみる
ずっと 凍り付いて いたような
夕日のなか 突然の雨は 光のしずくを つなげて
一日と いっしょに 変わる
わずかなこと
置き去りにされるような ちょっとした 不安
時間はすぎてゆく
昼下がり 村は ひっそりとして 牧草が 風にゆれるばかり
山羊の親子が 啼きながら 寄ってくる
陽射しが ふっくらとしている
緑のあいだ 光のした
目を細めながら 歩く 昼下がり
連翹が まっすぐ 枝を伸ばす
空に 近づくように
いつもの わたしに戻った
今朝の雨は 大きな音がして 怖かった
怖いものは どこにでもある
震えるほかに 聞いている
ベッドに 毛布が 横たわっている
よじれて ねじれて
いじけた わたしの抜け殻
ぺちゃんこに なってしまって
わたしの 時間になる
まだ いま
まどろみの ように
風のなか 花が かすんでいる
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