恋文
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日差しは 思いのほか きびしい
風は 冷たい
みんな はっきりとしている
雨を 運んでくる 灰緑色の流れ
風のなかで 聞いている
濁ったまま 流れてゆく
向こう岸を 見ながら
立ちすくんでいる 曇り空
眠たそうな 花のなか
きょうは 夏の日がもどり
真っ白な 土の道は
空にうかぶ 雲に 続いている
夕暮れは 音もなくやってくる
明るいまま 人の声も 遠ざかって
まだ 終わらない 一日を 待っている
ゆるやかに 動きつづげている
風が 冷たくなる
まだ 光の中
閉じこもる 一日は 暗くていい
雨の音が 通り過ぎてゆく
てのひらに 水をためる
小さな 海をつくる
なんにもない その中に
わたしを 沈めて
手をほどく
あっというまに なくなる
髪を 乾かしている
鏡のなか
ときどき 離れていってしまう
こんな わたし
どんな わたし
姿見に 映ったのは
骨格のような ひとつの からだ
少しづつ 削ぎ落ちていったのは
肉だけだろうか
揺れている そのあいだ
静かに うれしい
まだ 続いている
地面が濡れて それと知る
ひそやかな 雨は
息をひそめる 一日に ふさわしい
空は灰色でも
みどりと 花のなか
風は ふんわり 通り過ぎる
空が ふさがってしまう
どこにも 続かない道
一日は みずから歩む
雨が 降ってくる 傘はない
濡れたまま ほとほと 歩く
一日は みずから 過ぎる
白い道のりが 目に痛い
向こうに 緑の森
海に 沈む夢を
見ながら 沈む 眠りは
雨のなか
移り変わる ということを
こころに 留めておかなければ いけない
揺られながら 眠りに誘われる
このまま 漂っていたい
まだ さまよっている
出口は 知らない
それでも 行くしかない
玉葱を刻みながら 涙を流している いま この時 一日は過ぎてゆく
だからといって 何を思うだろうか ただ 玉葱を 刻まなくては
ハンバーグは ちゃんと焼ける そうやって 一日は やっぱり
過ぎてゆくものなのだ
暖かい日差し どこまで行っても きっと
今日は だから まどろんでいい
少しでも ここに いていいよね
もう すこし ここに いるよ
それから ばいばい
夢ですら 悲しくなるなら
どこに 行けばいいのだろう
進まなくちゃ 明るくしていなくちゃ 頑張らなくちゃ
と 思っていると ふと まわりが 灰色にみえる
いっぺん 立ち止まって 泣いていようかな
夾竹桃は 陽だまりのなか
思い出のなかに まどろみたい
そのまま 置いておく
いちにちは 自ら 過ぎてゆく
光と 影を 交互に 踏んで
行く先は まだ 知らない
どこか たどり着くまで
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