恋文
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去るもの 残るもの
どちらにも 冬の風が 吹く
馴染んだ景色が いとおしくなる
灰色の空でさえ
木々は 木のかたちのまま 凍る
思い出のまま 残るだろう
わたしは わたしのかたちのまま まだ
流れてゆく どこに 残るだろう
雪の山肌が 朱色に染まる
雲の切れ間から もれる ひかり
街灯は 雪を 滲ませ
街路を 滲ませ
眼を 滲ませる
昨夜の雪が 融けてゆく
まだ暗い 空のした
濡れた敷石を 踏んで
湿った 風の中
向こうの山の上は もう 白くなっている
朝には ここでは 雨だったのに
いつか 秋が通りすぎてしまった
行く先に しるしをつける
後には 目印はない
まだ遠くを みる
目覚めると 途切れる
夢を もういっかい 繋ぐ
つなげない
風が 見る夢を 見る
野原を 渡ってゆく
ひとしきり 時間は 怒涛のように 流れている
ちゃんと 立ち上がれる場所に たどり着くかな
向こう岸が にじむ
橋の欄干の 光が にじむ
さようならを 言いだす 前の時間
定かではない 道しるべを頼りに 一歩
まだ遠い 道のり
あちらに 走っては 立ち止まり
こちらに 戻っては 途方にくれる
日一日と 過ぎて わずかに 進む
静かな一日は 訪れない
雨の朝 空も 沈んでいる
夢ではない
記憶は あらたに
どこにも なかった
夢を紡ぐ
ひとつの 一歩
長い道のりから 見渡せば
ほんの 一歩
踏み出すのに 力が必要だった
身を任せてみる
浮かんだり 沈んだり
そのまま でも 流れてゆくよ
急流に流されるように 過ぎる
どこまでも 流れてゆく
ほんの 少しだった
歩き始めたら みるみるうちに
日差しは 傾いてゆくのだった
川原には いつものように 鴨たちが 来ていた
流れは 鈍いひかりを かがやかしている
たたずんでいる
身体のなかから 凍えて
雨の中 歩いてみる
落ち葉に ぱたぱた 雨音がする
ぼんやり かすんでいる 景色
雲の切れ目から 光が落ちてくる
わずかに それも灰色
かさかさと 落ち葉の色
ひそかに ひかる
辿りたい 道は どこにあるのかしら
落ち葉を 踏んで 歩く
金色の森
ぶらんこに 座って 考えている
だれも 押さなくていいのよ
押されても 嬉しい
熱のある 夢から 目覚めても
まだ 混沌
灰色の空
日が翳る
川には 鴨が降りてくる
波頭が 光って
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