恋文
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一日が 無事に終わる
暗い道を 帰る 急ぎ足
ためてね ためてね
わぁー、って だすと
とても 気持ちいいの
友達と逢う それが楽しくて 一日は もう 過ぎてしまった
どこからか 音が聞こえている
なんだろう
日のあたる窓辺
ここから 抜け出してゆく
気持ち
鳶が 空を舞う
扇のような 尾羽が
くるり
風に向かって 歩いてゆく
街灯の光も 揺れる
ブラインド越しに 洩れてくる 日差し 徐々に翳る
また 想う 遠い地の夕暮れ
日に日に 冷めてゆく光
かの地では なおさらに
傾いた 日差しを思う
風がやわらかい 道端に コスモスが揺れる 通りには 音もわずか
雲が 降りてくる
空を とんびが旋回する
風を 捉えた羽が上下する
とんびは 空高く行ってしまう
突然の雨
地面に 点々と映る光
目を上げれば 行方にも光
仮想でも 遠く離れていても
わたしの生きている 世界の一部
ちらりと見た 窓の外の夕焼け
惜しむ間もなく すでに暗い空
髪を梳く はりはりと 小さな音 冬支度
味気ない一日を 終わらせる
夢に戻るために
なんにも 変わったことはない
杉林の匂いのなかで 息をする
雨にかすんで 影になって 誰でもない わたしになっていよう
一日を 過ごし 終わろうとする
それだけの 一日
生きている世界 生きてゆく世界
行く先は ときどき 霞む
足元も 薄暗がりの
おぼろげな わたしたちの世界
ありありと 感じる 夜の冷気
思い出の中に
付かず 離れず いっしょにいる
ときに ふと 姿を現す
葉しょうがの かおり
夕暮れ前の 台所で
薄く刻む きょうの時間
刈り取られた 田 畦には 彼岸花
風の音もない 陽射しの午後
カーテンの 向こう側の時間
そこで過ぎてゆく
眠るわたしの時間
ここで過ぎてゆく
公園の暗がりを 足早に過ぎるあいだ
思いがけず 出会う
街灯の光の 陰になって
たくさんの 小さな花
あんまり 漠然としているので
不安も どこに居座ればいいか わからない
肌に感じていた 明け方の冷気
温もりがもどる間に
眠りのなかを 浮き沈みする
思い出のなかに 入っているうちに
逃れられなくなる 風の冷たさ
そこは いつもわたしの 変わらない場所
また 帰ってきたよ
すずめの群れが 飛び交う
川面が光る 午後
刈り取りの 真っ最中の田に
彼岸花の群れ
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