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ぎんなんが ぷつん と跳ねる ヒスイ色
夕暮れの台所
わたしを おんなというからには
どこかに おんながひそんでいる
いや ひそんでいるのではない
あからさまに
おんなであったり するのだが
ちぶさがあるはずのところ
ふれても かすかな ふくらみ
一日なんて なにもしなくても 過ぎていってしまう
気づかないまま
あ 雲が いつか厚くなって
夕焼けも ないのだった
かすかに 空の名残
いちにちの 終わりのために
いちにちを 過ごす
また いちにちが来る
カーテンから 洩れてくる光
朝と知りつつ まどろむ 冬の朝
空が青い
向こうの 山も青い
心を穏やかに 過ごしていたい
歩くあいだ なにも 考えていなかった
何か考えようと 思っていたのに
星が見えない 長い夜
あなたからの 短いメッセージ
約束を待っている
ひとつにならない わたしは
ほろほろ めぐる
かけらのまま
クリスマスの イルミネーションも 冷たい色
夜の道
誰も 焦らない
誰も 押さない
冷たい風が 吹いても
ゆっくり 時間の流れの なか
トンネルを いくつもくぐる
夜から 夜へ
知らない場所にいる
何事もなく 過ぎてゆく毎日
波紋はいらない
透かし見る 青空の まぶしさ
記憶と 遊ぶひととき
バスの窓に映る 外と中の顔
知らない町を 見ている
光と翳との
あいまいの あいま
木と木と 葉と葉と
透かして やってくる
遅い午後の ひかり
水の音を 聞きながら まどろむ
ベッドの中の 暖かさ
いまもまだ 咲く さつきの生垣
思い出したように 咲く 朝顔
雨は 黙って 降る
明日のこと 週末のこと
それから 一月先のこと
考えているけれど
何年も先のことは 考えられないのね
雨のなかに 歩みだす
風もいっしょに ついてくる
街灯のひかりが きらきら煙って
堤防の ここから 先まで
歩いてみましょうか
波が 寄せては ゆき
空は どんな色だったかしら
風は 冷たかったかしら
真っ青な空に 白い月 ぼんやりとして
冷たい空気
洗剤から 湧き上がった泡が
目の前で 消えた
雨の日の午後 台所は もう 暗い
水溜りをよけて 蛇行する
足元からも 湿ってゆく
傘のなか
忘れていたみたいに ぽつん ぽつんと 花が咲いている
さつきの植え込みに 雨がふりそそぐ
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