恋文
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風は 纏わるように 湿っている
若葉のみどりが まっすぐに 立っている
それにしても なんて 花たちは 咲いている
逃げてゆくように 行ってしまう
わずかな 街灯の光のなか ぼんぼりのように
まるい 八重桜
見上げて歩く
雨ばかり 咲き始めの サツキに 降り注ぐ
家の中の音も 外の音も 混ざり合って
眠れない
いつか 眠っている
遠い海を おもいながら 風の音を聞く
曇り空のした
静かな部屋に ラジオの音 時計の音
わずかな音を 追わずとも 追っている
雨で煙った町 光がにじんで 窓にうつる
雨が降るのだけれど
なんだか嬉しい
春の雨だから
小鳥が 誰かを探している
それが悲しいと いうのだろうか
小さく 啼いて また 飛び立つ
だから 声を 聴いている
腕に止まったね
いつのまにか 雨になっている
濡れた舗道を 光らせて
風も流れてゆく
帰ってくる
吐息
静かに
眠ろう
夢もみない 眠りのなかで
きっと 誰かと 遭っている
雨上がりは ひんやりとして 秋のよう
どこかに 隠れた 春の空
娘の弾くピアノは
やっぱり 娘の音だった
その音を聴きながら
とおくに行きたいのか 近くにいたいのか
ぼんやりしながら
しあわせに 聴いていたのよ
数えられないものを 目の当たりにしているような めまいのなか
避けても 雨のなか
街灯の光も 映る
空から 鳥の声が 降ってくる
仰ぎ見る 灰青色の空
花が咲いても さみしい
暖かい陽射しのなか 冷たい風がふく
風は花を散らし 曇り空を 駆け抜けて
花冷え 花曇り
花は 風にゆれて
空の隙間に 少し 青空
なんだか 柔らかい
桜の雨
街中には 花といった花は ないのだけれど
ふと 香ってくる
春は 春
疲れてくると 恨みがましくなる 自分がとまらない ため息のなか
風も雨も 追い立てるように 吼えるので 夜の闇が ますます 濃くなった
ひとりづつ さみしい
春風の 夕暮れ
月はどこに 行ったのかしら
まだ咲かない 細い木の枝の先
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