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道を行き交う車が 運んでくるのだろう
騒がしい風の音のように
もうすぐ終わる一日を
聴いている
永遠が ないならば
シジフォスも 役目を終わることができるね
雨が近い 風の匂いがする
雲が 駆け足で 流れてゆく
紅を刷いている 山の背の空
まだ 少し 窓も カーテンも 開けておこう
肩肌に 風がやってくる
みどりが 濃くなる
暑い夏の予感
夢に囚われたまま 朝の音を聞く
ひんやり冷たい
自分が好き という
いやらしいかしら
自分の からだも好き
嫌いなところもあるけれど
これまでも これからも
いっしょにいる
曇天を見上げる
木の葉を 透かして
虫の影
咳が 呼び戻す
ゆらゆら 揺れる
夢のなか
鉄橋を渡る 車窓から見る
川は土色に濁り 音は聞こえなくても 流れの激しさはわかる
山はまだ かすんでいる
離れた音
いっしょに ついてこない音
もう 眠る前に
押し戻す
小さい頃 熱にうなされながら 聞いていた
荒波の音を 思い出している
今日の雨風
雨になる前の 風に乗って
通りのざわめきも くすぶっている
殻を剥くのを 失敗してしまった 茹で卵の
白い肌から のぞく
黄身の味
降る雨も みどりにしみて
灰色の空のしたでも すこし明るい
あるがまま というのは むずかしい
だれかは いびつだというし
わたしは すなおだという
だれもが じぶんのものさしで みているのだから
別れの時と
なるのだろう
どこからともなく
どこからでも
眠れない夜の 堂々巡り
外から聞こえてくるのは 風ではなく
走る車の音 いったり きたり
行方は ぼんやりとする
雨のとばりのなか
霧のなかに たゆたう
月曜日の 灰色
山紫陽花が 咲いている
木立のなか ひかりが 和らいで
立ち止まる
雲が 流れてゆく
かさね合わせの すきまから もれてくるひかり
子供たちが いなくなった 公園に
水銀灯の光
犬を連れて 誰かが 横切ってゆく
ビルの壁が オレンジ色に染まる
夕暮れの 空は まだ明るい
風も 明るい
町並みは いつも 雑然としている
空の灰色が もっと くすんでいる
窓に映る 蛍光灯の 白い色
寒々として 夜になる
野菜たちは とても、きれいに切れる
さくりと かわいい音がする
かわいいのに 食べてしまう
とても、美味しい
曇り空のした ゆっくり歩く
花は光のように 咲き誇っている
音は聞こえなくても
ざわざわと 揺れる枝を見ている
空が暗くなって
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