恋文
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暖かいといっても まだ 寒い朝 青空がまぶしかった
春霞には まだ遠い 山を覆うベール
山の上にかかる 雲のあいだから 今日の終わりの陽射し 明日は 雨になるらしい
山にかかる 光の加減が 少し春めいてきた
ふわふわ 揺れる髪
自分の影を 見ながら歩く
夕方の光は 暖かくて まぶしい
すとんと 冷えてしまうのに
通りすがりの 窓が真っ赤だった
少しづつ 明るくなる空 春に近づく
湿った音のする 窓の外 斜めに落ちる雪
濡れた歩道に 滲んで揺れる 街の灯
土を押し上げて 水晶のような
足元で 割れた
まぶしい 夕日を 見ていると
終わろうと 思えなくなってしまう
明日のことを考える
夢のなかでも 考えている
少しずれているとしても
毛布のなかの 体温がうれしい
じぶんで あたたかくなる
薄いお皿が ちょこんと 乗っている
夜の始まりの空
空も 町も灰色 歩く人も 立っている人も 風のなか
風が冷たくなった 雲がぎっしりと 山の上に
古木は ずっと昔から そんなかたちを していたような
冷たい風のなか
雲の下に 沈む山々 雪とまがうように
雪になるという 暗くなってゆく 空の色
消防車の サイレンが 聞こえる
こんな 平和な 夜なのに
灰色は 空ばかりではなくて
景色の途中から 灰色の壁のようだった
濡れた町並みを 見ていた
すりガラスを 通してみているような 山のかたち
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