恋文
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満開の桜 花冷えの 空の下
ビルの間から 桜の花が見える
足早に 通りすぎても
どこにいても ふと
知らないところに いるみたいに
ぽつんと いるのは いい
蛍光灯の色は よそよそしい
人気のない ビルのなか
雨がやんでも 外は暗い
冬にもどる 街の灯も
閉じた窓からも 冷気が忍び込む
春の曇り空の 夕暮れ
ゆっくりと 疲れている 重いからだ
桜並木を 歩いてゆく
どこまでも 続いている
見渡すと 丘にも 庭にも 咲いている
歩いている 桜のなか
広告塔の光が 鮮やかになってゆく
冷たい風
花が たくさん開く
山が いろんな色になる
おなかいっぱいで ねむります
ころんと ころがります
まぶたが おもくなってきます
おやすみなさい
花が咲く
ゆっくり 歩きたいけれど
風が背を押す
ミモザの黄色
まだ歩く前の 娘を抱いて 座っていた 公園を思い出す
お皿のような月が そらの真ん中
夕暮れが どんどん濃くなる
降っていない 空のしたの 傘のかずかず
息のなかに 入ってくる 水のにおい
風の夢は 夢ではなく
ごうごうと 鳴る
風の音を 聞き続ける
堂々巡りを していると 朝になる
余韻を 残したまま 顔を洗う
冷たい水
ひかりが 重くなって 山裾に滞る
眼は どうやって 死んでゆくだろう
姿見の中の 姿を眼で追う
夢を眠る だるい からだを ひきづって
眠る 夢をみる
景色は かすみのなかに 遠ざかっていった
里山の のどかな姿
今日のことを していると 今日が終わる
それで 明日のことを 考える
遠い先のことは 考えても
始まらないし 終わらない
何も 思わなくても 過ぎてゆく 鉛のような日々
花には まだ早い 薄曇り
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