あたろーの日記
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2003年04月27日(日) 「グリーン・マイル」

 「グリーン・マイル」(1999年/スティーヴン・キング原作/フランク・ダボラン監督/トム・ハンクス主演)のDVDを観た。
 この映画は何回観てもボロボロ泣いてしまう。どの俳優さん達も役にぴったりだけど、ジョン・コーフィを演じるマイケル・クラーク・ダンカンが最高にはまり役。この前試写会で観た「デアデビル」に悪役で出ていたけれど、どうしてもコーフィとだぶってしまった。。。
 コーフィの台詞のひとつひとつが好き。
 決して饒舌ではないけれど、思慮深い言葉をぽつりぽつりと口にする場面がとてもいいと思う。
 映画公開に先立ってキングの原作が6巻に分かれて刊行され、せっせと買って読んだが、映画は原作のイメージを損なわずに作られていて、原作も映画も二重丸だと思った。同じ原作者と監督の「ショーシャンクの空に」も好き。両方とも刑務所が舞台。キングはホラーもこういうヒューマンなものも書けてしまう。しかも多作で愚作がほとんどない。いったい一人の人間がどうしたらこんなにカラーの異なる作品をどんどん生み出せるんだろう。キングはまさに稀代のストーリーテラーだと思う。

 コーフィの行いを「奇跡」とか「超能力」と一口で片付けて、キングの作品ならそれもありだよね、で終わるのは勿体ないと思う。
 あれは現実に十分起こりうる話ではないかと。いや実際にあちこちで似たようなことが当たり前のように起こっているのだと認識した上で、キングは書いたのではないかと思う。ただ映画となると、観客に訴えるために、どうしても演出が大げさになっちゃうのかも。。

 これは本人の承諾を得てここに書かせていただくのだけど。
 私と同い年の長い付き合いの友人がいるのだが、彼女は周囲の人の感情にとても敏感だ。例えば部屋に入ったとたんに、その場の雰囲気を瞬間的にキャッチしたり、ある人が自分に対して向ける悪意や、誰かが落ち込んだりしているのを、特に意図しなくても感じ取ってしまい、気持ちが沈むことも多いそうだ。逆に人が嬉しいとき、楽しんでいるときはそういう感情も受け取ることが出来、自分まで明るい気分になれるそう。さらにはメールに込められた感情や、モノに残る誰かの感情も読み取ることが出来るそうなのだ。
 昔はそれが災いして、人付き合いで悩んだことや、あまりの物分りのよさに、付き合っていた男性に気味悪がられたりして傷ついたことも多かったらしいけれど、だんだんと、自分の感情をコントロールしたり、人に接するときに逆に自分が相手に対してどういう感情を送ればよいかということが分かってきて、今ではかなり精神的にラクになったそうだ。
 彼女と一緒に出かけると、どうして?と思うような小さな奇跡が時々起こる。けれど、彼女に言わせるとそれは奇跡でもなんでもないことなのだそうだ。ただ、自分の想いが、出来事を引き寄せているに過ぎないのだそう。
 以前、彼女と共通の知人の家に遊びに行ったときのこと。
 その私達の親と同い年の知人は、前日足を怪我していた。小指の骨を折って、片足のくるぶしから下に包帯をぐるぐる巻きにして、松葉杖で歩くほどの怪我だった。医者からいろいろ手当てしてもらったにも関わらず、足首から下が紫色にぱんぱんに腫れて、触れるととても痛くてつらいとのこと。包帯を解いて私達にその状態を見せてくれた。
 それを見た友人が、ちょっとためらいがちに、両手でその足を包むようにしてしばらく触っていてもいいかと知人に聞いた。その場にいたほかの3人も、私も知人も、彼女が一体何をするのか分からなかったけれど、黙って見ていた。
 5分位だったかな、床にしゃがんで、くるぶしの下から小指の先まで、ちょっとずつ移動しながら、両手で包むようにして彼女が触れていたのは。知人の女性は、椅子に座り目をつむって「ぽかぽか温かい」「痛みが退いていく」「気持ちいい」と繰り返していた。そして彼女が手を離すと、「なんだか痛みがとれてラクになった」と不思議そうな顔をしていた。
 翌日その知人から私に電話があって、昨夜彼女が触れた足、今朝起きてみたら紫色で腫れていたのがすっかり退いて、まだそおっとだけどなにかにつかまりながら歩いている、と報告してくれた。
 友人によると、捻挫程度の怪我なら手でなんとかラクにすることが出来るそうだ。ヒーラーとして仕事できるんじゃないの?と聞いてみたら、本来誰にでも出来ることをしてみただけで、それを表に出したり、お金を得ようとは思わない、と言っていた。
 彼女はもの心ついてから少しずつ、周囲と自分の間にある些細なギャップから、だんだんと自分が普通とちょっと違うのでは?と気がつき始めたそうだ。けれど、そのうちに、自分がしていること、感じていることは、本来は人間誰しも持っている能力なのだと思うようになったそう。不思議でも奇跡でもなんでもなく、ただ、彼女の場合はそれを自覚するのが早かっただけなのだと考えているようだ。

 だから、そういう彼女にとっての「グリーン・マイル」は、原作者のキングが意図するしないに関わらず、彼女なりの想いを重ねて観たコーフィの物語なんである。
 


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